ビジネスを育てるの感想|スモールビジネスや起業に興味がある方におススメ

ビジネスを育てるという本を読みました。
著者は何社かを起業したことがある人物で、実体験から学んだことを解説しています。その内容は大企業と中小企業との比較や、起業する上で多くの人がはまりそうな罠などです。
なぜ私がこの本を読んだかというと、起業に興味があり、中小ベンチャー出身であり、今はプロボノで中小企業の支援をしているからです。
私がこの本をおススメしたい人は、以下のような人たちです。
- 起業を考えている人
- 起業に興味がある人
- 中小企業の経営者
- 中小企業の支援をしている人(コンサルなど)
このような方々の参考になればと思い、私がこの本から学んだことを書いてみます。是非参考にしていただき、興味を持てたら読んでみてください。
仕事に対する価値観
「ビジネスを育てる」では最初に仕事に対する価値観が出てきます。
簡単に言ってしまうと、仕事はお金儲けよりも自分らしさということです。
仕事をしてお金を稼がなければ生きていけないことは確かです。しかしお金だけのために仕事をすることはキツイと私は考えています。
「ビジネスを育てる」の著者は自分らしい生き方、自分らしさの表現としての仕事について書いています。
生活のために仕方なくやるよりも、自分らしさを発揮して他人の役に立てた方がいいことは間違いありません。
ただしそれを実現するためには稼がなければいけません。ここがクリアできるなら、もっと多くの人が独立して好きなことをやっていそうですよね。
とはいえ自分らしさを発揮できる仕事で成果を出すために、この本では著者が実体験から得た教訓を色々と書いてくれています。それを読んで学びましょう。
スモールビジネスの強み
スモールビジネスとは個人事業や中小企業の事業を指します。どちらも大企業と比べると圧倒的に不利ですが、大企業にはない強みも確かにあります。
スピード
スモールビジネスは決めたら即実行ということができます。意思決定に関わる人が少ないからです。
私は大企業のプロジェクトでITアーキテクトをやった経験があるから言います。大企業では関係者がとても多いため、調整に時間がとてもかかります。
中小企業のプロジェクトなら、社長やプロジェクトマネージャーがその場で決めればいいことでも、大企業のプロジェクトでは関係者との調整で半月から一ヶ月は簡単にかかってしまいます。
スピードはスモールビジネスの圧倒的な強みです。
顧客サービスの質
大企業は大きな体を維持するために大きな売上が必要です。そのためマスを狙って広告を打ち、顧客を沢山集めます。これは同時に画一的なマーケティングをせざるを得ないことを指しています。
スモールビジネスでは常連客がいる家族経営のお店などがいい例ですが、顧客一人一人に寄り添った手厚いサービスを提供できます。
「ビジネスを育てる」でも著者はサービスの質で勝負しています。そしてファンをつかむのです。
そういえば私も技術力よりも顧客サービスの質で勝負してきました。顧客にとって何を聞いても何か答えてくれる専門家は頼りになるものだからです。
急成長より堅実成長
急成長は歪みをもたらす
経営者は成長を志すケースが多いです。特に営業出身者は仕事を沢山受注してドンドン会社を大きくしようと考えます。
しかし「ビジネスを育てる」にも書かれていますが、従業員の成長以上に会社は成長しません。
受注を増やしても、仕事をこなす従業員のスキルがついていけなければいけません。
また受注を増やして従業員数を増やすのはよくあることですが、そうなると仕組みや制度、プロセス、管理職の育成などが追い付きません。
結果的に生産性は下がり、離職率は上がります。
急成長成功ストーリーの誘惑に釣られないことが大事
メディアが話題にするのは、創業から数年で億単位の売上を稼いだとか、上場したという急成長企業です。
すると急成長企業の華々しいサクセスストーリーばかりが目につき、華々しさに釣られて羨ましくなります。
しかしビジネスとは自分のライフスタイルでもありますので、他人と比べず自分のペースで歩む必要があります。
急成長を志して成功する企業は一握りです。メディアが積極的に広めるネタには生存者バイアスがかかっています。
華々しいサクセスストーリーは私だって羨ましいと感じますし、そういう成功を手にできたらと思うことは山ほどあります。
でも自分のペースで確実に歩むこと、自分が社会のためにやりたいことを確実にやっていくことが大事ですね。そういう風に自戒を込めておく必要があると感じました。
顧客をよく知る
大企業は広告による押し付けをしているという話が「ビジネスを育てる」には出てきます。そして中小企業は顧客の視点や立場で考えることの重要性が「ビジネスを育てる」では説かれています。
この話を読んで、デザイン思考と似ていると私は感じました。
デザイン思考は顧客へのインタビューやエスノグラフィーによって顧客を知り、仕組みや新製品を作るという考え方です。新規事業や新製品、イノベーションなどに使われる手法です。
お金はあるよりない方がいい
起業した人はお金に苦労します。その話は何度も聞きましたし、私自身も零細ベンチャーで資金繰りの苦しさを知りました。
しかし「ビジネスを育てる」ではお金はあるよりない方がいいという、一般論とは真逆のことを主張しています。とはいえ読んでみると納得できます。
お金があると広告や作業の外注などにあるだけ使ってしまうからなのです。
逆にお金がないと、外注しないで自前で作るしかなくなります。すると様々なことを勉強して試行錯誤するので、学びが大きく、色々なことができるようになるというのです。
会社において経営者の能力はとても重要です。経営者が解っていなくて外注丸投げじゃダメですよね。専門業者には劣るけど、専門業者と話せるだけの知識はあった方がいいと私は考えます。
この自前主義というのは、私が趣味でやっているDTMも似ています。
DTMをやっている人の中には、演奏やアレンジの作成、ミックスダウン、イラスト、動画などを外注している人がいます。いずれの作業も1回1万円くらいが相場です。
となるとYouTubeに1曲アップする度に3~5万円くらいかかるのです。こんなにお金がかかる趣味は滅多にないと思います、
私は完全内製化で外注一切なしでやっているため、何十曲作ってもお金がかかりません。
独立した人向けの情報では、一般的には自前主義は非効率で、外注をドンドン使った方がいいとされています。しかしそれはある程度事業が軌道に乗って、お金ができてきてからでいいみたいです。
立ち上げ当初は自前主義がいいということです。永遠に自前主義がいいということではないです。
働きやすい職場を作る
「ビジネスを育てる」では従業員の採用やマネジメントについても後半で解説されています。
従業員を採用するときは自分より優秀な人を採用しろというありがちな話もあります(これが採用する側の心理的に難しいのでしょうけど)。
何より私も共感できるような以下のことが解説されています。経営者や管理職には是非読んでいただきたいポイントです。
- 従業員が1人で仕事を完結できるようにする
- 色々な仕事を経験させて視野を広げる
- オープンに話せる環境を作る
- 信頼や自由が大事
- コントロールは不要
この話を読んで、心理的安全性やティール組織を連想しました。
心理的安全性とは意見を自由に言えて、失敗を責められず、自分らしくいられる組織文化のことです。
ティール組織とは従業員の裁量に任せている組織です。
自主経営と呼ばれるように、経営者はビジョンとサポートに徹し、管理職はいなく、従業員が管理職の役割も兼ねて自主的に仕事を進めていく組織です。
また色々な仕事を経験させて視野を広げるという考えは、トヨタ生産方式でも語られています。
トヨタ生産方式では多能工の育成も重要な課題とされています。理由は視野を広げモチベーションを高めるためです。
終わりに
「ビジネスを育てる」という書籍を読んで気に入ったので、起業に興味がある方や中小企業の経営者、支援者などのために参考になると思い、感想を書きました。
複数の会社を起業して、長く経営し続けてきた人が実体験から語る教訓は読んでいて面白かったです。だからこそ参考になりそうな方に紹介したいと感じました。
この記事をきっかけに、この書籍があなたのビジネスにとって参考になれば幸いです。