ベンチャー出身者が語る!中小企業の強みを活かした経営

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ベンチャー出身者が語る中小企業の強みを活かした経営

私は25人のブランド戦略会社、6人の金融機関向け経営管理ベンチャーと渡り歩いて、会社が無くなったのを機に150人程度のITコンサル会社に転職しました。

大企業のプロジェクトに参加したこともありますが、中小企業をM&Aによって拡大したホールディングスの連結会計をやったこともあります。

そんな経験から中小企業の強みを活かした経営について書いてみます。

起業を考えている方や中小企業の経営者・管理職の方、あるいは中小企業向けのコンサルとしての独立を考えている方などの参考になれば幸いです。

中小企業の強み

スピード感

私は中小企業にずっと勤めてきて、大企業のプロジェクトもやったことがあります。

そこで感じたことは、中小企業は経営者や管理職、プロジェクトマネージャーが即断即決して決められることです。

一方で大企業は承認フローが長い上に、関係者が多いため調整も多いです。中小企業ならその場で決められることにも1ヶ月くらいかかってしまいます。

なぜなら大企業は従業員数も顧客数も協力会社数もとても多いため、あらゆる活動のインパクトが大きいからです。そのため慎重に時間をかけて計画し、多くの関係者に納得してもらう必要があるのです。

大企業にはないスピード感は中小企業の圧倒的な強みです。そして意思決定力は練習をこなすことで鍛えられます。

顧客への柔軟な対応

中小企業は顧客への柔軟な対応が可能です。細かいルールがないから現場次第である程度調整が利くのです。

大企業だったら多くの従業員が均一なパフォーマンスを出すためにマニュアルや標準があります。また広い地域に展開しているからこそ、どこに行っても均一なパフォーマンスが必要になります。

それゆえマニュアルや標準にないことは例外として扱わなければいけないため、対応してもらえないことが多いです。前例を作ると面倒なことになるという理由もあります。

だからこそ中小企業は顧客に個別対応しやすいのです。常連客やファンを作って安定的な収益を得ることが中小企業にとって重要です。

ちなみに中小企業が顧客の深掘りすることの重要性や効果を書いた本があります。私自身が読んで面白いと感じた本です。是非読んでみてください。こちらに感想記事を書いています。

中小企業の強みを活かす方法

スピード感を上げるにはアジャイルを活用する

スピード感を上げるにはアジャイルで実験しながら進めることも有効です。

即実行で試し、ダメならピボットするベンチャー流のやり方はアジャイルで可能です。小さく始めて実験を繰り返すのです。

中小企業の生き残りはとても厳しいです。生き残るために新規事業や新製品・新サービス、マーケティング手法などを試行錯誤している会社は多いでしょう。

そのような活動では、キッチリとした計画を立てるよりも、可能性があることを損失が小さく済むように小さく試してみることが重要です。やってみなければ解らないことが多いからです。

やってみなければ解らないことをやるときは、アジャイルが有効です。

従来のキッチリした計画を立てる方法であるウォーターフォールとアジャイルを比較しながら解説した記事もありますので、スピード感を上げたい方は読んでみてください。

薄利多売よりサービス品質を上げることを意識する

他社より安くないと売れないんじゃないかという不安は多くの企業にあるでしょう。

しかし安く売ることばかり追求すると、薄利多売となって疲弊してしまいます。すると資金も仕入れ量も人員も勝る大企業の方が有利です。

中小企業はサービス品質で常連客を掴むことが重要です。

CRMを活用して、見込み客~商談~成約~アフターフォローまで一元管理することが可能です。またCRMなら顧客データを一元管理し、顧客対応履歴も管理できます。

https://www.salesforce.com/jp/resources/articles/crm/what-is-crm

そしてそれを全従業員で共有できるため、マーケティング、営業、開発・生産、カスタマーサポートの各担当者で情報共有できます。

顧客から見てたらいまわしにされることを避けられますし、事前にCRMで顧客のことを調べて対応に当たれば、話もスムーズに進むでしょう。

またデザイン思考を活用して顧客のニーズを深掘りすることも有効です。デザイン思考は顧客のニーズを深掘りし、イノベーションや新製品・新サービスの開発を促進する手法です。

従業員教育を行ってデザイン思考を身に付けさせましょう。

デザイン思考についてこちらに詳しく記事を書いていますので、イノベーションや新製品・新サービスの開発に興味があったら読んでみてください。

中小企業が顧客との関係構築を行ってファンを増やした例に、ヤッホーブルーイングがあります。よなよなエールで知られる会社です。

ローカルグロースという地方創生の本に、ヤッホーブルーイングのインタビューがありますので、気になる方は読んでみてください。

地方創生の本ですし、地方の中小企業が上手く経営をやることをテーマとしています。よって他にも中小企業にとって参考になることが多いでしょう。


人材育成に力を入れる

大企業が研修をやろうとしたら、長い承認フローと投資対効果の計算が必要です。上層部を納得させられない活動は経費削減のためにも簡単には承認されません。

しかし中小企業なら試しに講師を呼んで勉強会をやってみるとか、社長の知人を講師として呼ぶことも、即断即決で可能です。

経営者や管理職、プロジェクトマネージャーが裁量で何とでもできるのが中小企業です。

経営者や人事部がベテラン社員を講師とした社内勉強会を企画するにしても、試しに今度やってみようということも簡単です。承認だって口頭でいいですよね。

OJTだって小さな社内なら詳しい人を探すのは簡単です。大企業ではよその部署や人は当然解りませんが、同じ部署でも人が多すぎて解りません。

私は現在プロボノで、中小企業の人材育成の支援をしています。そのために考えたことを記事にしてみました。人材育成で悩んでいる方は読んでみてください。

また人材育成を行うことで、従業員が顧客に出せる成果が上がります。それによって顧客満足度が上がり、業績も上がります。

この流れを表したフレームワークにサービスプロフィットチェーンというものがあります。こちらも参考にしてみてください。

M&Aを活用した拡大戦略

中小企業を拡大する理由

あくまでも私個人の意見ですが、中小企業が強くなることが日本のために大事です。

なぜなら日本の会社の99%は中小企業、労働者の70%が中小企業勤務だからです。

日本を支える中小企業:中小機構

つまり中小企業が強くなって儲からないと、多くの国民の給料が上がらないですし、残業も減りません。

この記事を書いている2025年時点では、円安が急速に進んだおかげで値上げラッシュが起きています。しかも給料は一部の大企業で物価高対策で上がるか、新卒だけ上がっている状態です。

これじゃ生活できません。だからこそ中小企業の経営を強くして儲かるようにすることで、多くの国民の給料を上げられるようにする必要があるのです。

そして中小企業が規模拡大をして中堅企業になることで、スケールメリットが効いて給与水準を上げられるようになります。

従業員はもちろんですが、経営者だって給与水準を上げられるようになります。

拡大にはM&Aが有効

私はM&Aコンサル会社のシステム子会社で銀行の経営管理システムやホールディングスの連結会計システムの開発をやっていました。連結会計に関しては計算ロジックを作ったりもしました。

連結会計の案件では、数十人から200人くらいの企業が集まったグループを担当していました。200人程度の会社がM&Aを繰り返して数十人規模の会社を買収し、規模拡大をしていたのです。

また私は株をやっていて、投資先には100~300人程度だけどM&Aを活用して業績を上げている会社が数社あります。

これらの経験から、中小企業が規模拡大を図るならM&Aが有効と考えています。

昨今は後継者がいない中小企業のためにM&Aを活用する機会が増えています。そして後継者がいないために廃業する会社の半分は黒字です。

このような会社の中で、自社と文化的に相性が良く、シナジーを出せる事業を行っている中小企業をM&Aするのも有効な手段だと私は考えます。

後継者不足という問題を解決して従業員を保護しつつ、自社も成長できるからです。

M&Aの注意点

M&Aには注意点があります。何と言ってもPMI(Post Merger Integrationの略)と言って、M&A後の統合が一番難しいのです。

組織文化が合わない会社、あるいは自社の事業とシナジーを出せない会社をM&Aしてしまうと、失敗に終わります。

それゆえ組織文化や事業の相性をよく検討した上でM&Aを行う必要があります。

またM&Aによって中小企業が規模拡大を行うと、規模が大きくなることで大企業病に陥る危険性もあります。こうなると中小企業の強みが失われてしまいます。

規模拡大をしても中小企業の強みを維持するためには、事業部分けやグループ会社分けを上手く行い、権限委譲を行って、事業やブランド単位で中小企業として動けるようにする必要があります。

終わりに

今回は私自身が中小ベンチャーで経験を積んできたことと、プロボノで中小企業の支援をしていることから、中小企業の強みを活かした経営について考えてみました。

プロボノでの中小企業野支援でも取り組んでいることや検討していることを書きました。

この記事が少しでもあなたの参考になれば幸いです。強みを活かした経営をやって、価値を出していきましょう。

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