企業の急成長には「歪み」が伴う!5つのリスクと対策を解説

急成長している企業を見ると凄い!と感じますし、そういう企業に入れたらドンドン仕事の内容もポジションも上がっていくことを期待できます。私には無縁でしたけどね。
しかしそういう華やかに見える企業には歪みが伴います。急成長には良い面と悪い面があるのです。
今回は中小ベンチャー出身で大企業のプロジェクトの経験もある私が、企業の急成長に伴う歪みとその対策について書きます。
次のような方々の参考になれば幸いです。
- 独立・起業を考えている、あるいは準備している方
- 今は会社が小さいけど、将来は大きくしたい方
- 企業の変革を考えている方
- 上記のような企業の管理職の方
- 上記のような企業をコンサルなどの仕事で支援している方
システムやプロセスが追い付かない
効率化や標準化で生産性を上げる必要が発生する
企業が小さいうちは、一部の人手業務プロセスを手探りで確立していくことも多いでしょう。また導入した機械やソフトウェアを使える人が一部しかいない可能性もあります。
小さい企業には人力、属人性、暗黙知などがありがちです。しかし小さいがゆえに詳しい人に聞けば済んでしまいます。
しかし企業が大きくなると、人力、属人性、暗黙知が足かせになります。
企業が大きくなれば業務量が増えます。すると一部の人しか知らない業務をこなすのに時間がかかりすぎてしまいます。そのような業務がボトルネックとなるのです。
そこで人力な業務は機械やソフトウェアで自動化して効率化する、属人性や暗黙知がある業務は標準化する必要が出てきます。
属人性の解決はこちらの記事を参照してください。
標準化についてはこちらの記事で成熟度モデルというものを解説していますので、読んでみてください。
標準化は効率向上だけでなくミスの減少にも役立つ
企業が大きなって業務量が増えると、認識違いによるやり直しやミスも増えます。単純に業務量が増えるだけでなく、人を新たに採用するため、採用した新しい人が熟練するのに時間がかかるからです。
そして量が多いがゆえに、これらによる生産性や品質の低下が問題になります。
このような問題は都度都度再発防止策を考える必要があります。そして標準プロセスやマニュアルに組み込んでいく必要があります。こういう意味でも標準化が必要です。
人材育成が追い付かない
企業が急成長すると、人材育成が追い付かなくなります。業務量が増えるため、人を沢山採用するからです。
当然ながら採用した人を育成しなければいけません。また人が増えれば管理職が必要になります。特に問題になるのは管理職の育成が追い付かなくなることです。
管理職は組織をまとめつつ人を育てる役割もあります。管理職が育たなければ人を活かすことも育てることもできません。
そこで企業の急成長に伴って特に重要になることが、管理職の育成です。
組織文化や理念が従業員に伝わらない
企業が大きくなると組織文化や理念を繰り返し伝える必要が出てくる
企業が小さいうちは経営者が従業員に組織文化や理念を直接伝えることができます。一緒に仕事するだけでも伝わることもあります。
しかし企業が大きくなると、組織文化や理念を明文化し、繰り返し伝えていかなければいけなくなります。
私はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューを定期購読しています。この雑誌には大企業の経営者のインタビュー記事がよく登場します。
そこでよく出てくる話が、繰り返し伝えたということです。
つまり企業が大きくなると、組織文化や理念などは繰り返し伝えないと伝わらなくなるのです。
組織文化や理念の影響は大きいのでしっかり伝える
組織文化はパフォーマンスに大きな影響を与えます。自社に合った人材を集め、定着率やモチベーションを高める効果があります。
組織文化や理念が曖昧になれば、自社の目指すところや強み、個性などが曖昧になります。すると自社に合わない人が集まってきたり、方向性が一貫しない製品・サービス作りを行ってしまう可能性もあります。
ブレないためにも組織文化や理念は大事です。だからこそ企業が成長するに従い、従業員にしっかりと伝えていきましょう。
ただし伝統的な企業によくある暗唱については私は否定的です。経営者のメッセージとして繰り返し伝えましょう。
資金繰りが苦しくなる
企業が急成長すると、受注量や生産量が急増します。また店舗や拠点も増えます。従業員数も増やす必要が出てきます。
すると運転資金が急増します。これは資金繰りが苦しくなることを意味します。急に出ていくお金が増えるためです。
受注量や生産量が増えれば、仕入れや生産のためのお金が増えますし、店舗や拠点が増えれば家賃が増えます。家賃はとても高い支出です。
また従業員を沢山採用すれば、当然ながら人件費も教育費もかかります。
このように企業が急成長すると、急に出ていくお金が増えてしまうため、資金繰りが苦しくなります。
ただし業績が良くて、かつ成長見込みがあれば、銀行からの融資は受けやすいかもしれません。
私は銀行の経営管理をやっていたことがあるから言いますが、銀行は業績が良い会社が大好きで、業績が悪い会社を避けたいですから。
長期的成長より短期的視点が重視されてしまう
儲けを優先して短期的視点に陥ってしまう危険性がある
企業が急成長するときは心理的にも勢いに乗っています。すると儲かりそうなことをドンドンやって、もっと儲けようと考え出します。
そんなときに何をやるかというと、今流行しているビジネス、できるだけ早く売上を立てられそうなビジネスをやるわけです。
こうなると本来やりたかったビジネスや目指すべき姿を脇に置いてしまう危険性があります。
そして流行が変わったり、急成長が止まったりしたときに、「自分たちは何がやりたかったんだっけ?」となります。
たまたま受注できた大型案件に気を付ける
大型案件を受注できたときに大量採用すると、終わったときに人が余ってしまいます。短期的な仕事すなわち流行やたまたま受注できた大型案件などは、外注を使うことも検討しましょう。
リストラなんて悲しいことはできるだけ避けたいです。一時的な儲けで調子に乗ることには気を付けましょう。
私がこんな話をする理由も書きます。私の投資先のM&Aコンサル会社で、大型案件を受注できて採用も沢山して、配当も増やした企業がありました。
ところが翌年は大型案件がなくなって大赤字になってしまいました。従業員数は維持していますが、配当は0円になってしまいました。
こういう痛い経験があるからこそ、あえて短期的視点の落とし穴について書きました。
終わりに
今回は私が見聞きした話や本で読んだ、急成長して痛い目を見た企業の話を基に、企業の急成長に伴う歪みについて書きました。
よって企業は堅実に成長していく方がいいでしょう。
こちらの記事に、スモールビジネスを上手くやる方法について書かれた本のまとめを書いています。やはり堅実成長が良いと書かれています。
欲張って無理な急成長を求めたり、目先の売上に釣られたりしないよう、確実な成長を実現していきましょう。