【例付き】残業しないプロジェクトマネージャーが教えるWBSの作り方

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残業しないためのWBSの作り方

仕事でWBSを作る機会は多いです。そもそもやるべき作業をしっかりと洗い出せなければ、トラブルが発生してしまいます。

この記事ではWBSとは何かから始まって、私がWBSは重要だと考える理由や、私が意識しているWBSの作り方のコツなどについて解説します。

マネジメント初心者の方はもちろん、将来はマネジメントをやりたいという方、ビジネススキルアップに励む方などに参考にしていただけたら幸いです。

WBSとは

WBSはWork Breakdown Structureの略です。

作業項目(Work)をブレイクダウン(Breakdown)しながら詳細化し、階層構造(Structure)として表したものです。

WBSは仕事における作業項目としても、スケジュール表の作業項目としても使われます。つまり仕事において欠かせないものと言えます。

WBSが重要な理由

やるべき作業が明らかになる

WBSを作ることで、仕事を完了させるためにやるべき作業が明らかになります。

そもそも何をやったら仕事を完了させられるのかが解らなければ、仕事を進めることができません。こういう意味でWBSは仕事に欠かせないです。

役割分担ができる

WBSを作ればやるべき作業が明らかになります。するとこの作業はAさんがやる、この作業はBさんがやるなど、作業の役割分担ができるようになります。

仕事は1人でやるにはスキル面でも物量面でも困難です。だからこそチームで進める必要があります。

その際に作業項目を洗い出せていれば、役割分担を決めることができます。

スケジュール表を作成できる

WBSを作ることで必要な作業を洗い出せるため、スケジュールを立てられるようになります。WBSを作って日にちの線を引けば、よく見るスケジュール表(ガントチャート)になります。

作業項目が明確になれば、次は着手順の検討や見積を行って、スケジュール表を作成できるのです。

そしてスケジュール表が出来上がれば、仕事を完了させるのに必要な期間が解ります。するとステークホルダー(上司や顧客、協働が必要な部署や協力会社など)と認識合わせができます。

ステークホルダーすなわち関係各者という視点はマネジメントにおいて必須です。よってこちらの記事も参考にしていただければ幸いです。

WBSの作り方

作業を洗い出す

まずはザックリと作業を洗い出しましょう。

例えば開発プロジェクトなら設計工程、製作工程、テスト工程というように工程全般を洗い出します。

イベントなら事前準備、スケジュール、現地での設営など、事前にやっておくことと現地でやることなどです。

ここで意識することは、できるだけ広く洗い出すことです。作業の抜け漏れがないことが大事です。

作業をブレイクダウンする

作業をザックリ洗い出したらブレイクダウンしましょう。

WBSにブレイクダウンという言葉が使われている通り、大分類→中分類→小分類と作業を細かくしていきます。

開発の設計工程ならA機能、B機能などです。

イベントの事前準備なら予約が必要なもの、印刷や購入が必要なもの、持ち込む備品などです。

作業の粒度が適切か確認する

ブレイクダウンしすぎて細かくなりすぎることは問題です。WBSは粒度が適切な方が解りやすいです。

大体3階層くらいまでブレイクダウンできればよいと私は考えていますし、私の実体験でも大体3階層くらいで十分です。

MECEになっているか確認する

作業項目を洗い出してブレイクダウンもして3階層になったら、MECEになっているか確認しましょう。

MECEとは漏れなくダブりなくという意味です。作業漏れはスケジュール遅延につながるため避けたいところですし、ダブりがあると別々の人が同じ作業をしてしまうことで工数が無駄になってしまいます。

MECEについてはこちらに詳細な解説と例を書いていますので、是非参考にしてください。

シミュレーションする

WBSを作ってみたものの、本当にこれで全ての作業を洗い出せているのだろうか?

そんな疑問を抱くかもしれません。でもそれはマネージャーとして健全な感覚です。私も必ずそう自分に問うようにしています。

そこで私がいつもやっているのはシミュレーションです。WBSの作業項目について、これはこういうやり方でできると思うなど、やり方を想像します。

するとやり方を考えているうちにイメージが浮かんできます。そして必要な準備や調整事に気付けます。

これによってWBSの作業項目が不足していることにも気付けます。

また私が様々なプロジェクトを見てきて感じていることは、見通しが甘い人が多いということです。

人間は将来の予測が苦手なため、リスクや異常系の作業を洗い出すことが上手くできません。そして仕事を進めていくと作業漏れや想定外のトラブルに遭遇し、残業でカバーすることになるのです。

だからこそ私はこれで大丈夫か自分に問う習慣とシミュレーションする習慣を身に付けています。

WBS作成のコツ

他人の視点を借りる

人間は完璧ではありません。マネジメントの世界では人間には必ずバイアスがあると考えます。

人間は誰しも偏った観点を持っているゆえに、見落としが発生します。

そこでWBSに迷ったら上司やチームのメンバーに意見を聞いてみるのも1つの手です。

完璧なWBSは作れないと知る

残念ながらどれだけマネジメント経験を積んでも、完璧なWBSを作ることは不可能です。

我々は超能力者ではないのです。人間は完璧ではないのです。だから作業漏れや想定外の作業は必ずと言っていいほど発生します。

人間がいかに不完全かを知ることもマネジメントにおいて重要なことです。

つまり精度の高いWBSを作ることは重要ですが、WBSが全てではないということです。

言い換えると計画が全てではなく、いい計画を作りつつも臨機応変に対応することがマネジメントで重要なことだと私は考えています。

私がこう考える理由は、当初の計画を死守しようとして残業地獄に陥るプロジェクトを沢山見てきたからです。

これについて別途記事を書いています。重要なことなので読んで参考にしていただければ幸いです。

作業を洗い出すために型を使う

WBSを作るために作業を洗い出すと言っても、上手く洗い出せないとか、洗い出し方が解らないと感じるかもしれません。

そこで私がおススメしたい方法が、型を使うことです。

例えば準備、実施、検証の3つの観点で作業を洗い出すのです。この3つはどんな仕事でも発生することだからです。例を挙げます。

仕事の種類準備実施検証
製品開発技術検証、設計生産品質チェック
営業市場や顧客の調査訪問先の選定、資料の作成、アポ取り商談前の資料やサンプルのチェック
料理メニューの検討、レシピの作成調理味見
イベントスケジュール作成、予約、告知、持ち込み品の調達設営、実行設営したもののチェック、音響チェック、持ち込み品のチェック
運送品物の確認、ルートの確認、配送先の確認配送現地到着時の品物や配送先住所の確認
仕事の種類別に作業を準備、実施、検証の型で洗い出した例

WBSの例

スーパーでの買い物

まずは日常的に使えて、日常的に練習できるものとして、スーパーでの買い物でWBSを作ってみましょう。

  • 野菜
    • もやし
    • キャベツ
    • 人参
  • 主菜
    • 鶏肉
    • ししゃも
    • 厚揚げ
  • 日売品
    • 牛乳
    • 納豆
    • 食パン
  • 総菜
    • フライ
    • 唐揚げ

買うものが多いときに買い物メモを作ることで、WBSの練習になります。

大掃除

続いて例題として使いやすいという理由で大掃除のWBSを作ってみましょう。

  • 台所掃除
    • 台所のシンクの掃除
    • 台所のコンロの掃除
  • 部屋掃除
    • 全ての部屋の掃除機掛け
    • 散らかったものの片付け
    • 要らないものの整理
  • 洗濯
    • 洗濯機をしかける
    • 洗濯物干し
  • 風呂
    • 風呂釜の掃除
    • 風呂の床の掃除

DTM

最後は長くなりますが、モノづくりというテーマでDTMのWBSを作ってみましょう。

私が趣味でDTMをやっているから選んだお題ですが、モノづくりには設計、製作、検証の3工程が必ずあるため、型で考えやすいのです。

  • 楽曲
    • 設計
      • 作曲
      • 作詞
      • アレンジ
    • 制作
      • ボーカルの打ち込み
      • 曲の打ち込み
    • 検証
      • 音外れのチェック
      • 不協和音のチェック
      • 聴き映えのチェック
    • 仕上げ
      • ミックスダウン
  • MV
    • 設計
      • MVの構成の検討
      • MVの各シーンの検討
      • MVに私用する素材の選定
    • 制作
      • MVの素材の用意
      • MVの作成
    • 検証
      • 誤字脱字のチェック
      • 素材間違いのチェック
      • 違和感のチェック
  • 公開
    • 楽曲の解説文の作成
    • YouTubeへのアップロード

ステップアップのために学ぶとよいこと

WBSの作り方を学んだら、次は見積やクリティカルパスについて学ぶとよいです。そうすればスケジュールの作り方が上手くなります。

クリティカルパスについても記事を書いていますので、是非読んでください。

見積については私としては元Microsoftの人が書いた「ソフトウェア見積」という本がとてもよかったです。

統計学を使った外さない見積法について解説している本です。また見積の参考にするデータの選び方についても解説しています。

残念ながら古い本にプレミアがついて、ネット通販では1万円を超えているようです。電子書籍で買うのがよいでしょう。


スケジュール作成について私が考える心構えを書いた記事もあります。できている人は少ないため、是非できるようになってください。

終わりに

今回はWBSの作り方について、私の知識や実体験を基に解説しました。

また私が見ていて上手く行っていない、すなわち残業地獄に陥っているプロジェクトがやっているアンチパターンについても書きました。

WBSを上手く作れるようになれば、残業もスケジュール遅延も減らせます。ここに書いたWBSの作り方やコツを試して、健全な働き方を目指しましょう。

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