スケジュール作成とはあなたの作戦計画を作ることだ

今回はスケジュール作成について解説します。具体的な作成方法についてはWBSやガントチャートなどの書籍が沢山出回っていますので、そちらを参考にしてください。ロジカルシンキングも学んでおくと役立ちます。ここではスケジュールを作成する上で考えることや心構え、悪い例などを紹介していきます。
WBSについてはこちら
https://ja.wikipedia.org/wiki/Work_Breakdown_Structure
ガントチャートについてはこちら
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88
スケジュールを作成する意味
実現性のある計画を立てるため
スケジュールを作成する1つ目の理由は、実現性のある計画を立てるためです。自分自身がこれから仕事を進めていく上で、どんな作業を、どんな順序で、どのくらいの時間をかければできるのか見当するためです。
仕事を回していく上で考えることは沢山あります。何か問題が発生した都度対応を考えていては後手に回ってしまい、ゴールは遠のいてしまいます。また作業順序を間違えた、作業ボリュームを見誤ったなどのミスは多々発生します。
だからこそ事前に色々なことを考慮しながら作戦を立てる必要があります。スケジュール作成とは作戦を立てることだと覚えておいてください。
関係各者と合意を取るため
スケジュールを作成する2つ目の理由は、関係各者すなわちステークホルダーと合意を取るためです。仕事としてはこちらの方が大事です。
仕事において納期は非常に重要です。いつまでに何ができるのかをステークホルダーに伝えて合意を取る必要があります。あなたの作戦をスケジュールという形で見せ、この作戦なら目的を達成できると説明し、納得してもらうのです。

ダメなスケジュールの作り方
ダメな例を紹介する理由
まずはダメなスケジュールの例を紹介します。みなさんも見たことがあるかもしれません。ダメなスケジュールのせいで長時間労働を強いられた経験がある方は決して少なくないと思いますし、酷い場合はそんな案件だらけの会社もあります。
ダメなスケジュールは必ず反面教師にしてください。しっかり分析して、どうすればよいのかを考えてみてください。
テンプレートを埋めただけのスケジュールはダメ
社内にあるExcelのテンプレートをコピペして、とりあえず作業項目と期間を埋めましたというスケジュールを私は見たことがあります。スケジュール作成の経験が浅いと、どう作っていいか解らずにこういうことをしてしまうこともあるでしょう。
社内のテンプレートをコピペしたケースでは、その通りに仕事が進みますか?と聞くと黙るか楽観的に多分大丈夫と答えるかのどちらかが多いです。しかしやってみると全然上手く行かず大変なことになりがちです。
作業的に作ったり、多分大丈夫で作ったりしても、スケジュールは上手く行きません。実現可能でなければいけないのです。例えて言うなら、こちらは1,000人、相手は2,000人の戦いで、なんとなく大丈夫でしょで突っ込んでいっても負けるのは目に見えていると解ると思います。
そういう作戦計画(この例では作戦もへったくれもないですが)を指揮官であるマネージャーが立ててはいけないということです。
希望がそのままスケジュールになっているのはダメ
希望納期をスケジュールにしてはいけません。○月末までにできたらいいなという基準で作ったスケジュールでは絶望を味わうことになるケースもあります。
このような考え方では、都合の悪いことが起こらない前提とし、何でも予想以上に上手く進むという超楽観論でスケジュールを作ってしまいます。その結果、後で残業地獄を味わう羽目になります。
希望をスケジュールにした例で私がいくつか見たことがあるものとしては、希望の倍くらいの時間がかかった例もありますし、酷いものは4倍くらいの作業ボリュームがあった例もあります。これでは夢を見ているだけです。
昔私が手伝ったプロジェクトの話ですが、スケジュールを守るために100時間も残業した挙句、まったく守れず嘘で誤魔化すというとんでもないプロジェクトが名だたる大企業ですらありました。
このプロジェクトでは偉い人の希望がそのままスケジュールになっており、実際はスケジュールに対して4倍くらいの作業ボリュームがありました。大企業から中小企業までこういう例があります。
マネジメントは夢を見ているだけでは上手く行きません。これも重要な反面教師です。例えていうなら、ダイエットの計画を立てるのに、毎月順調に5kgずつ痩せていくという計画を立てているようなものです。

スケジュール作成で意識すること
ダメな例を紹介したところで、今度は上手く行くスケジュールを作成するために心がけた方がいいことを紹介します。
作業をMECEになるように洗い出す
作業の抜け漏れはよく発生します。そのため作業項目を洗い出すときはMECEを意識してください。MECEとはMutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、日本語にすると漏れなくダブりなくという意味です。詳細はこちらのリンクを参照してください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/MECE
後から作業漏れに気付くと痛いです。そして納期を後ろにずらすことは一般的に難しいです。よって納期を守るために後から作業の抜け漏れに気付くリスクを減らした方が安全です。
リスクを強く意識する
仕事を進めていく上でリスクは必ずあります。リスクは良いことも悪いことも含めて想定範囲外のことです。良いリスクは置いておくとして、悪いリスクは予測して作戦を立てる必要があります。
リスクが起きてから考えるのは下策です。リスクは影響が大きくなる前に潰すのが上策です。リスクに対する意識の差は、そのまま残業時間やスケジュール遅延に響いてきます。
また長時間労働と納期遅延を頻発する泥沼化したプロジェクトはお約束のようにリスクに対する考え方が甘いです。
これは後でまずいことになるんじゃないか?こういうことが起きたらどうしよう?というもので、確率・影響度ともに低くなかったら、対策をあらかじめ考えておく必要があります。ただし発生確率が極めて低い、あるいは影響度が小さいリスクは事前に対処を考えなくてもよいです。なぜなら投資対効果が見合わないからです。
まず滅多に起こらないけど大きなリスクは、スケジュール作成で対処というよりは、その時に緊急会議が必要になるレベルのものです。大きな問題が起きたら、現場だけでなく上層部も巻き込んで検討しないとダメでしょう。
影響が小さいリスクについては、妥協案も必要です。完璧を目指してはコストも増え納期も遠ざかります。理想ではなく、現実的な予算と納期でできることを目指さなければいけません。
並行でできることを考慮する
スケジュール作成は作戦計画を立てることだと先に書きました。
作戦ですので先にやった方がよいとか、同時に進められるかなども考慮します。同時に進められる作業があれば、クリティカルパスを短縮できる可能性もあります。クリティカルパスの短縮は納期の短縮につながります。よって希望納期に間に合わせられる可能性が高まります。
やることを減らすという判断も有効
投資対効果が低いこと、効果や影響度が小さいことはやらないという判断も必要です。こういう作業が積み重なると、塵も積もれば山となり、ボリュームが膨らみます。100点満点を目指すことはありません。
交渉によってこれらの作業を削ることも、ときには有効です。作業を減らした分だけコストが下がり、納期を短縮できます。またはもっと優先度や効果の高い作業を代わりに入れるという選択ができます。
実現可能性を検討する
スケジュールを作成したら、本当にこれで大丈夫か検討しましょう。
夢を見ているスケジュールではいけないと先に書きました。この順序で、こういう進め方で、ゴールにたどり着けるか?この期間で本当にできるか?できないならどの作業のやり方を変えればいいか?この順序で実は手が空いてしまうことはないか?など、スケジュールを作成したら実現可能性について検討します。
ステークホルダーにスケジュールを見せて合意を取ったら、あなたの案件がスタートします。しかしそれは同時に、あなたはその案件をそのスケジュールで達成するとみなされるということでもあります。
だからこそ仕事だからスケジュールを作ったではなく、この作戦計画だったら自分は目的を達成できるという基準でスケジュールを作成してください。そうした上でステークホルダーにスケジュールを見せてください。夢を見ているだけのスケジュールでは後で失敗して失望されてしまいます。

終わりに
スケジュールとは何かについてイメージが持てましたでしょうか?
スケジュール作成は難しいですし、完璧な見通しは不可能です。しかしここに挙げたことを意識して、考える訓練を積んでいけば、きっとできるようになります。
練習として個人で何かを作るのにスケジュールを立ててもいいですし、ダイエットのスケジュールでもいいかもしれません。もちろんダイエットのスケジュールでも夢を見ているだけのスケジュールを作成してはいけませんよ。