マネジメントにおいては計画に固執せず柔軟に対応することが大事

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スケジュールを死守せず柔軟に対応する

前回はリスクを意識してスケジュールを作成することを説明しました。

これと矛盾するようですが、計画は死守するものではなく、状況に応じて変えるものです。今回は状況に応じて計画を柔軟に変えることについて、必要性や注意点を解説します。

計画を死守することは危険

状況が変わる可能性はある

仕事において、起こりうるトラブルを完全に予測することは不可能です。必要な作業が新たに発覚することもありますし、当初必要と思っていた作業が不要になることもあります。優先順位が変わることもあります。

不要になった作業はやらなくてもいいですし、必要な作業が増えたら時間が多くかかるようになります。優先順位が変われば作業の着手順を見直さなければいけません。

つまり状況が変われば計画も変える必要があるのです。決して計画を死守しようとしてはいけません。計画の死守は長時間残業の元です。

計画は死守するものではなく、状況に応じて柔軟に変えるものという認識を持ってください。

計画を守ることが慣習になっている

我々は子供の頃から計画の大切さを教えられ、計画を立ててそれを守ることを要求されています。社会人になってもそれは変わりません。そのため計画は変えてはいけない、守らなければいけない神聖なものという意識が染みついているケースもごく当たり前のように見かけます。

人間は習慣の生き物ですので、昔からの慣習に疑問を持ちません。そういうものだという捉え方をしてしまいます。しかし先ほども書いたように、計画は重要ではあるけど絶対的なものではありません。状況が変わったらステークホルダーと相談して、ときには変更も検討してください。

ダメな例

それでは架空の例を出しましょう。

A課長が責任者を務める製品開発プロジェクトでは、Xという機能を開発する予定でした。しかし進めていくうちに技術的な問題が発覚しました。それにより当初予定していた要件の一部が満たせない上、工数も当初の見積より多くかかることが判明しました。

A課長は何が何でもスケジュールに間に合わせるよう、残業や休日出勤を行い問題解決に当たりました。

こういうときは代替案を探したり、別の機能や運用ルールでカバーする方法を模索するという選択肢もあります。できないことで無理やり粘るより、できる方法を探してみましょう。

計画は死守しないこと
計画を死守すると大変なことになる危険性があります。しかし慣習故気付かないものです。柔軟に臨機応変に対応しましょう。

状況に応じて柔軟に切り替える

リスクは必ずあるので柔軟な対応が必要

仕事を進めていく上で想定外のことは必ず起きます。まず心構えとしてこのことを肝に銘じておいてください。残業地獄に陥るプロジェクトには、想定外を考慮していないという特徴があります。何もかもが順調に進むという夢見た考えでスケジュールが引かれ、計画を死守しようとしています。

このような考えは通じません。想定外のことは起きるものだと解っていれば、いざ起きても落ち着いて対処できます。

想定外のことが起きたときは、状況に応じた判断が必要になります。落ち着いて内容や影響度を調べてください。影響が小さければ計画への影響は少なく済みます。影響が大きい(実現できない、方針転換や人員増加が必要など)であれば、対応を検討する必要があります。

柔軟に対応する例

先ほどのA課長の例をもう一度見てみましょう。

A課長はスケジュールに間に合わないと判断しB部長に相談しました。B部長は機能Xの仕様をYにしたらどうかとアドバイスしました。

調べてみたところ、Yという仕様に変更すれば、技術的に全要件を満たすことができ、当初の見積工数で開発できそうだと判明しました。

このように押してダメなら引いてみることも必要です。だからこそ当初の計画を死守するよりも、状況に応じて柔軟に対応する方が上手くいきます。また計画を死守するためにメンバーに長時間労働や休日出勤をさせることは、コンプライアンスやモチベーション、健康、残業代などのコスト面でよろしくないです。

軸がぶれないように気を付ける

状況に応じて柔軟に対応するとは言っても、都度都度方向転換しては前に進まなくなってしまいます。そのため軸がぶれないようにするという意識をもっておくとよいです。

この言葉は私が駆け出しの頃に、元TV番組制作のADだった先輩から教わったものです。具体的にはこの案件において絶対に譲れない、必ず達成しなければいけないもの、コンセプトなどの根幹に関わる要素などはコロコロ変えてはいけないということです。

例えば他社に先駆けて新製品・新サービスなどを市場に投入する案件であれば、スピードすなわち投入までの期間がぶれてはいけない要素になります。60点でいいから市場投入を優先するということです。

当初想定していた仕様を実現しようと思ったら予定期間をオーバーするなどの問題が発覚した場合、先に投入して後からマイナーチェンジで追加するなどの対応を取ることも検討します。品質に関しても最初から100点は目指しません。60点でいいから投入します。

スピード重視の製品・サービスとしては、情報システム、SaaS(Software as a Service)、ベンチャーの製品・サービスなどが該当します。

一方で品質重視でなければいけない製品・サービスの場合は、100点と思える品質になってから投入することが重要です。例えば交通系や金融系、医療系の製品・サービスなどは不具合があっては大変なことになります。

また富裕層向けの製品・サービスなども品質に問題があってはいけません。これらもブランディング、デザイン、接客サービスやオペレーションなどをキッチリ詰めてから市場投入となるでしょう。60点の品質ではクレームものです。

このように変えてはいけない要素を仕事の目的からしっかり把握しておく必要があります。そして想定外の事態が発生したら、変えてはいけない要素を優先します。こうやって方針がぶれないようにします。

軸がぶれないように
いくら変化に対して柔軟に対応すると言っても、方向転換を繰り返してゴールにたどり着かないのではいけません。

柔軟な対応に対する社会的認知は高まっている

最近はアジャイルが浸透しています。変化が世の中になり、当初の計画を死守するよりも、状況に応じて優先度を見直して対応した方がよいと認知されてきました。

特にイノベーションなどの新しい価値を生み出す必要性が高まってきているため、アジャイルのような柔軟な方法はやったことがないこと、すなわち何が起きるか解らないことをやる際に有効な手段です。

アジャイルソフトウェア開発

方向転換する場合はステークホルダーに合意を取る

もし想定外の事態が起きて計画を修正しなければいけなくなっても、黙って勝手に変えてはいけません。ステークホルダーの合意を取りましょう。

例えばあなたが製品Xを開発中だとします。想定外の問題が発生し、仕様をAからBに変えなければいけなくなったとします。上司に黙って変えて開発完了後に使用を変えましたと上司に言ったら、もっと早く言えよとなると思います。

スケジュールを見直す場合は合意を取る
状況の変化に対してスケジュールを見直す場合は、ステークホルダーと合意を取りましょう。

終わりに

今回は状況の変化に対して計画を死守することの弊害と、柔軟に対応することの重要性について解説しました。

計画はしっかり検討しつつ、柔軟に対応してください。決して計画を死守してはいけません。残業地獄を味わう羽目になりますので。

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