アサーションを活用した仕事の上手な断り方を例題付きで解説

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アサーションを使って仕事を上手に断る

仕事を頼まれると断りづらいことってありませんか?かといって仕事を引き受け過ぎては自分自身がパンクしてしまいますし、残業も沢山発生してしまいます。

そんな人向けにアサーションという方法があります。アサーションを使えば相手を不快にさせずに断ることができます。

今回は仕事で次のような悩みを抱えている方のために、アサーションを使って仕事を上手に断る方法を解説します。

  • 仕事を頼まれると断れない
  • 仕事を引き受け過ぎて残業ばかりしてしまう
  • いつも仕事を沢山抱えていて忙しい

もしあなたが上記のような悩みを抱えているのであれば、アサーションを学んで仕事を上手に断って、無理なく働けるようにしましょう。そして健全な働き方を実現しましょう。

まずは最初に私が読んだ教科書を紹介しておきます。仕事を上手に断れるようになりたいと思ったら、読んでみてください。

アサーション入門ーー自分も相手も大切にする自己表現法【電子書籍】[ 平木典子 ]

アサーションとは自分も相手も大事にする自己表現

アサーションとは自分も相手も大事にする自己表現です。

アサーションでは自分の都合を相手に主張します。一方で自分の都合を一方的に押し付けるのではなく、相手の都合も聞きます。

一方的に「俺の都合はこうだからお前も合わせろ」ではないのです。そんな会社が沢山あるとか、そんな上司は沢山いると言いたい人はいると思いますが、それはアサーションとは対極な行為です。

アサーションでは自分の都合はこうだけど、あなたはどうですか?と聞きます。こちらが自己主張したら、相手の主張を受け取ります。自分は自分、相手は相手、お互いにとってよいことが大事なのです。

そうしてどちらか一方だけの都合が押し通されることがないのがアサーションです。

自己表現の種類

アサーションでは自己表現が3種類あるとされています。アサーションに則ったアサーティブな自己表現と、アサーションとは対極的である非アサーティブな自己表現です。

そして非アサーティブな自己表現は非主張的自己表現と攻撃的自己表現に分かれます。どちらも日常的に見かける自己表現ですので想像がつきやすいでしょう。

非主張的自己表現

非主張的自己表現は自分の都合を言わずに我慢してしまうことです。

例えば上司から無茶ぶりな仕事を依頼されたとします。今が水曜日の始業時間として、今週中にやる仕事が既に20時間分あるのに、今週の金曜日を期限として10時間分の仕事を依頼されたとしましょう。

このままだと水木金で30時間の仕事を金曜日までにやらなければいけません。これでは毎日2時間残業しないと終わりません。

かといって断れば上司の機嫌を損ねて評価を下げられてしまうかもしれません。そうなれば給料やボーナスにも響いてきます。

1回くらい断っても大丈夫でしょう。しかしこういう無茶ぶりな依頼はよくあることです。そして何度も断れば印象を悪くする危険性もあります。すると評価を下げられて給料やボーナスに響いしてしまう危険性があります。

このように会社や上司の命令に仕方なく黙って従っている方は多いでしょう。本当は断りたいけど気まずいから断れないと思って従ってしまうのが非主張的自己表現です。

付き合い残業や付き合いの飲み会も同様です。本当は早く帰りたいけど、仕方なく残業したり、仕方なく飲み会について行ったりしているのです。

非主張的自己表現を繰り返すと、自分が損をしてしまいます。そして損をしているうちに相手を嫌いになってしまうかもしれません。できるだけ避けたいものです。

攻撃的自己表現

攻撃的自己表現は怒って相手に言うことを聞かせる自己表現です。先ほどの非主張的自己表現とは逆です。

主に怒って言うことを聞かせるのが攻撃的自己表現ですが、ときにはわがままを言ってゴネて相手に言うことを聞かせることも含みます。

広い意味で捉えると、相手が従わざるを得ない方法で従わせるのが攻撃的自己表現です。

攻撃的自己表現は自分の都合を一方的に押し通します。言うまでもなくこれは自己中心的でわがままなことです。

しかし人間は自分の都合を一方的に押し通したくなるものです。

例えば機嫌が悪い時は周りに気を使ってほしいと思う人が多いでしょう。家族やクラスメイト、同僚に対してこういうことをしてしまう人もいます。

自分が上司や先輩で、相手が部下や後輩なら、自分の言うことを聞いて欲しいでしょう。自分が元請けで相手が下請けの場合も同様です。

攻撃的自己表現をし続けると相手に嫌われていきます。いつかは見捨てられるでしょう。

アサーティブな自己表現

アサーションに則った自己表現、すなわち自分も相手も大事にする自己表現がアサーティブな自己表現です。

例えば予定が入っている日に一緒に遊びに行こうと誘われたとします。こんなとき、「もう予定が入っているから無理だよ!」「忙しいことを察してよ!」などと不機嫌な返事をしたら気まずくなることは想像がつくと思います(こういう返事をする人はいるものですが)。

アサーティブな自己表現では、「ごめん、その日は予定が入っているんだ」と自分の都合を主張します。そうした上で「また今度誘ってね」などと相手に気を使っていることも伝えます。

自分も相手も大事にするのがアサーティブな自己表現です。だからまずは自分の都合を主張します。でも自分の都合だけで終わってはいけません。

相手も断られたらちょっとショックでしょうから、相手に気を使います。それで「また今度誘ってね」など気を使った表現を付けたします。これで自分も相手も大事にしているということになるわけですね。

これなら自分の都合も守れて、相手も「まぁ今回はしょうがないか」と諦めが付くでしょう。

アサーションをドラえもんで例えると解りやすい

私が読んだアサーションの教科書には、ドラえもんで例えると解りやすいと書かれていました。これはとても解りやすい方法だと私も感じました。

そして本書によると、ドラえもんで例えたアサーションの授業を小学校でやってみて、子どもたちが解りやすいと感じたそうです。

子どもにも解るなら大人にも解りやすいのは納得です。

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非主張的自己表現をドラえもんで例えるとのび太

非主張的自己表現をドラえもんで例えるとのび太なのだそうです。

のび太がお母さんや先生に怒られたときやジャイアンに命令されたときを想像してみましょう。仕方なく従っていますよね。決して断ったり逆らったりしません。

のび太のように仕方なく従ってしまう自己表現が非主張的自己表現です。でものび太だと陰で愚痴を言っていそうですよねと私は思ってしまいます。

現実の社会でも、子どもは親や先生に逆らえないとか、多くの人は俺様な上司や同僚に押し付けられたら断りづらいということが起きているでしょう。

あるいはお客さんに言われたら、下請けの人が元請けの人に言われたら、立場ゆえ断りづらいでしょう。印象を悪くして次から仕事をもらえなくなってはまずいですから。

非主張的自己表現は現実の社会に沢山存在していると考えられます。

攻撃的自己表現をドラえもんで例えるとジャイアン

ジャイアンは本当に攻撃的自己表現ですよね。「俺様の言うことが聞けねぇのか!」みたいな。

ジャイアンの名言と言えば「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」です。この世のすべてのものがジャイアンのものなのです。

ジャイアンはのび太が命令に従えなければ「のび太のくせに生意気だ!」と怒ります。やってることはパワハラ上司やブラック企業の経営者・管理職と変わりませんね。

ジャイアンはとても解りやすい攻撃的自己表現の使い手です。

アサーティブな自己表現をドラえもんで例えるとしずかちゃん

アサーション入門を読んでいると、アサーティブな自己表現はしずかちゃんがやっているという話が出てきます。

しずかちゃんは予定がある日に誘われても、「ごめんねその日は予定が入っているの。でもまた誘ってね」と相手に気を使った断り方ができます。

消しゴムを勝手に使われても、「次に使うときは言ってね」と言うんじゃないかという話も出てきます。ちゃんと相手を不機嫌にさせずに気を使って自分の都合も言えているのです。

アサーション入門を読んでみてふと気付きました。そういえばしずかちゃんって相手に無理な押し付けはしないなと。怒ることはありますが、それはのび太が無茶な要求をするからです。

どうすればアサーティブな自己表現になるか迷ったときは、しずかちゃんのように怒らずに気を使った言い方を考えてみるのも一つの手ですね。

非アサーティブな組織

アサーティブな自己表現と非アサーティブな自己表現について解説したところで、さらに理解を深めていただくために会社などの組織の体質も含めてお話します。

世の中には非アサーティブな自己表現がまかり通っている組織が3種類あります。私はいずれも体験したことがありますが、理不尽さや不快さを感じました。

昭和な体質の組織

昭和な体質の組織とは、上意下達で権力主義な組織です。これぞまさしく非アサーティブな組織です。

会社や上司の命令は絶対で、逆らうことはできません。口答えせずに黙ってやれと怒られるので、自分がやりたい仕事の希望や、仕事のやり方に対する意見などを言うことも許されません。

会社や上司が黒と言えば、白も黒になる世界です。

また同質性が高く同調圧力が高い組織ですので、みんなと一緒であることを求められます。自分だけ違っては非常識で問題児だと怒られてしまいます。

昭和な体質の組織では、会社や上司が従業員に対して攻撃的自己表現をしています。命令と権力は絶対ですので。

同時に従業員には非主張的自己表現が求められます。会社や上司の命令に逆らうことはできず、口答えしてはいけないからです。

またみんなと一緒でなければいけないという面でも、非主張的自己表現が求められます。自分の好き嫌いややりたいことを言ってはならず、周りの人、特に同期と同じことをして同じ釜の飯を食うことが求められます。

体育会系の組織

体育会系の組織も非アサーティブな組織です。

体育会系の組織も昭和な体質の組織同様に、上意下達で権力主義です。先輩の命令は絶対であり、先輩に逆らうことや意見を言うことは許されません。

先輩が黒と言えば、白も黒になる世界です。

ブラック企業

ブラック企業が非アサーティブな組織であることは説明不要でしょう。

ブラック企業では会社の命令が絶対です。口答えは絶対に許されませんし、口答えなどすれば何時間の説教が待っているかも、どんな罰則を受けるかも解りません。

経営者や管理職は一方的に命令してきますし、意見を言うことは絶対に許されません。

アサーティブな組織

非アサーティブな組織について解説したところで、アサーティブな組織についても解説します。

アサーティブな組織は今風とか先進的という言葉が合う組織です。いわゆるビジネス書やマネジメント書で昨今こうあるべきと書かれていることが実現している組織です。

一言で言うと心理的安全性のある組織となります。

心理的安全性とは自分の意見を言っても怒られない、失敗しても怒られない組織文化のことです。心理的安全性がある組織はパフォーマンスが高いことで知られています。昨今のマネジメントの論文にもよく登場する言葉です。

書籍も出ていますので読んでみてください。

恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす [ エイミー・C・エドモンドソン ]

それでは心理的安全性のあるアサーティブな組織の特徴を見ていきましょう。

仕事に対する自分の希望を言える組織

心理的安全性のある組織では仕事に対する自分の希望を言えます。

私は昭和な体質の組織にいたときに、こういう仕事をやってみたいと上司との面談で言ったことがあります。しかし即否定され、その仕事をやって何になるんだとか、与えられた仕事を口答えせずにやれと怒られました。黙って言うことを聞けよという文化でした。

その会社は早々にクビになって、自由な文化の会社に移ったら、自分の意見を言うことが許される文化でした。いわゆる心理的安全性のある会社ですね。

こういう会社では「どんな仕事をやりたい?」と聞かれます。昭和な体質の組織みたいな「問答無用で言われたことを黙ってやれよ!」じゃないのです。

そうしてエンドユーザー相手の仕事やマネジメントなどの経験を積むに至ります。

今いる会社でも「どんな案件をやってみたいか?」と管理職との面談で聞かれます。会社としてもできるだけ社員の希望に沿う案件に配属することを意識してくれています。

このように自分の希望を言える組織はアサーティブな組織と言えます。非アサーティブな組織なら一方的に会社の言うことを聞く非主張的自己表現が求められますから。

アサーティブな組織なら自分がやりたい仕事や案件を言っても怒られることがないのです。必ずしも受け入れられるわけではないですが、会社としても配慮はしてくれるのです。

仕事のやり方に対する自分の意見を言える組織

昭和な体質の組織ではマイクロマネジメントが行われます。「命令を聞け!」「マメに報連相をしろ!」「上司が言う通りのやり方に黙って従え!」です。

これは会社や上司や攻撃的自己表現をしており、従業員には非主張的自己表現が求められているということです。

心理的安全性のある組織では、上司は部下を信じて任せます。部下は自分のやり方でやっていいと考えます。

また上司が部下に相談することもあります。上司だって完璧ではありませんから、たまにはミスをしたり抜け漏れがあったりします。そこを補うべく上司が部下に相談することもあります。

すると部下は自分が認められていると感じ、意見を言いやすくなります。

こういう状態が実現すると、お互いにとってメリットがあります。そんなコミュニケーションが日常的に行われているのであれば、アサーティブな組織であると言えるでしょう。

私もプロジェクト責任者という立場で仕事をさせていただいている立場なのですが、プロジェクトメンバーを信じて任せることを意識していますし(放任状態になりがちですが)、メンバーの意見はとりあえず何でも聞いてみます。

この方がアサーティブになり、お互いにとって快適でやりやすいです。

ちなみに信じて任せるということについては大工の棟梁に学ぶプロジェクトマネジメントという本にも書かれています。コミュニケーション術やチームビルディングについても書かれているので、興味を持ったら読んでみてください。

大工の棟梁に学ぶプロジェクトマネジメント【電子書籍】[ 白鳥 美子 ]

私用で有給休暇を取りやすい組織

心理的安全性のある組織では有給休暇を取りやすいです。私用で有給休暇を取ることが認められています。また閑散期に手が空いたからと有給休暇を取ってプライベートを満喫することも許されています。

昭和な体質の組織では残業も多く、「忙しいのに休みを取るとは何事だ!」と怒られます。基本的には体調不良でしか有給休暇を使えないのが昭和な体質の組織であり、しかも体調不良で休むと「根性がない!」とか「軟弱だ!」と怒られます。

今はそんな会社は減ってきていると思いますが、私が新人の頃はそうやって何度も怒られました。これはまさしく会社が攻撃的自己表現を行い、従業員には非主張的自己表現が求められている状態です。

これとは逆に心理的安全性のある組織では有給休暇を取りやすいのです。もちろんいつでも取れるわけではなく、忙しいときに取ってはダメです。

とはいえ忙しくない、あるいは仕事でちゃんと成果を出していれば私用で有給休暇を取りやすいということは、自分の主張が認められやすいということです。まさしくアサーティブであることが認められている組織です。

社員発の活動が認められやすい組織

社員が自発的に行う活動が世の中には存在しています。かつて日本がジャパン・アズ・ナンバーワンになった要因の1つに、現場による改善活動があります。上からの命令がなくても、QCサークルなど現場で改善活動を行うチームを作って活動したのです。

また最近は会社が研修を用意するのではなく、社員が自主的に勉強会を始めている例もあります。私が所属する会社もそうです。

転職活動をしていた頃に某大手外資に面接に行ったときは、毎週のように勉強会のお誘いメールが飛び交っていると言われました。これらの勉強会は社員が自主的に開催しているそうです。

社員が社内活動や社内イベントを考えて、会社がそれを認めて支援するということが行われている組織は、アサーティブな組織と言えるでしょう。

社員は黙って言われた仕事だけをやってろではなく、やりたいことを仕事でも仕事以外でもできるのですから。そして会社もそれを認めるのですから。

アサーションで仕事を断る例題

アサーションとアサーティブな組織、非アサーティブな組織について解説したところで、アサーションを使って仕事を上手に断る方法を考えていきます。

実践しやすいよう例題としてやってみます。

これ以上仕事を受けたら残業が必要なのに仕事を依頼されたとき

問題

Aさんは今月の仕事が180時間分あります。今月はちょっと忙しくて20時間の残業が必要です。

しかしそこへ他部署のBさんから新たな仕事を依頼されました。これをやると残業が20時間増えてしまい、合計40時間の残業が必要です。

このままではちょっと想定外の事態が発生しただけでも、三六協定の上限である45時間に達してしまいます。ここは気まずくても依頼を断るしかありません。

というわけで上手に断る方法を考えてみましょう。私が考えた案を書きますが、あなたも上手に断る方法を考えてみてください。

解答例

Aさんは相手が不快にならないように断るにはどうしたらいいかを考えました。そして仕事を上手に断る方法を調べてみたら、アサーションという方法を見つけました。

Aさん「すみませんが今月は手が一杯ですぐには着手できない状況です。来月の頭に最優先でやらせてもらうので、ちょっと待ってもらってもいいですか?もし今月中にできていないとまずいタスクがあれば急ぎでやります。」

Bさん「そうか今月は手が一杯か。できれば早くできた方がいいけど、今月中に絶対というわけじゃないし、来月の頭でもいいよ」

Aさんはなんとか残業地獄を免れました。

今回はBさんにとって今月中でないとまずい仕事はありませんでした。しかしBさんがどうしても今月中にと言った場合は、上司に相談して一部を他の人に手伝ってもらうよう調整しましょう。

自分の専門外で解らない仕事を依頼されたとき

問題

CさんはITコンサルタントをやっています。主に金融機関向けのシステムの導入や刷新の支援をしています。

ある日、Cさんの友人のDさんに相談があると言われました。

Dさんは独立して自分でお店をやっています。そして集客に悩んでいるとのことです。集客のためにCRMなどマーケティングツールの使い方を教えてほしいと言われました。

CさんはITの専門家ですので、CRMなど当然マーケティングに関するツールのことも専門誌などで読んだことはあります。しかし実務で使ったことはありませんでした。それどころかマーケティングの案件もやったことがなかったです。

さすがに知ったかぶって実はやったことがないので解りませんというのは無責任です。

今回も私が考えた解答例を書きます。あなたも上手な断り方を考えてみてください。

解答例

Cさん「実は俺、マーケティングの案件をやったことがなくて。CRMとかマーケティングオートメーション、カスタマーサクセスなど、概念は専門誌などで知ってるけど実務で使ったことがないんだ」

Dさん「なんだそうなのか。だけど困ったな。集客が上手く行ってなくて経営がギリギリなんだよ」

Cさん「そうだ。俺の知り合いでマーケティングの案件をいくつかやったことがあるって人がいるから紹介するよ。その人なら俺より全然知見があるから、集客方法とかツールの使い方を知ってるかもしれない」

Dさん「それは助かる。ありがとう」

このように自分にとって専門外のことを無理して知ってるふりをしても、上手くは行きませんし相手を失望させます。

こういうときは知ってそうな人を紹介してあげるのがいいと私は考えています。どの会社のどの部門や担当者に聞けばいいか、どういう業者に相談すればいいかを代替案として伝えましょう。

優先度・重要度が低い仕事を依頼されたとき

問題

Eさんは他部署のFさんから仕事を依頼されました。

Eさんは今月は160時間分くらいの仕事がもう入っているので、これ以上の仕事を引き受けたら残業が必要です。しかしFさんから依頼された仕事は40時間分もあり、今月中にやってほしいとのことです。

これはかなり厄介な問題です。現実の世界でも仕事は容赦なく増えていくものです。上手く断らないといくらでも残業することになってしまいます。

私が考えた例を書きますので、あなたもこの残業三昧になってしまう依頼を上手に断る方法を考えてみてください。

解答例

EさんはFさんから依頼された仕事をリストにし、優先度・重要度や作業手順を洗い出してみました。すると実は今月中でなくてもFさんの部署のスケジュールに影響はなさそうだと気付きました。

EさんはFさんに聞きました。

Eさん「この作業は今月中でないとまずいですか?今すぐでなくてもスケジュールにはあまり影響がなさそうです。今月は手が一杯なので、今月下旬くらいから着手で、来月上旬くらい完了見込みでもいいですか?」

Fさん「できれば早い方がいいと思ったけど、確かに絶対に今月中ってわけじゃない。早いに越したことはないけどね」

Eさん「そういうことであれば、すみませんけどちょっと待っていただいていいですか?今ある仕事が片付く今月下旬くらいには着手できると思うので」

Fさん「まぁそういう事情ならそれでもいいよ」

今回はFさんが依頼した仕事は来月にやってもよいものでした。しかしもしFさんが依頼した仕事が今月中にやってくれないと困るものである場合、上司と相談が必要です。

そして優先度が低い仕事を来月に回して、Fさんが依頼した仕事を今月中にやる必要があります。

世の中は昭和な体質や体育会系の会社、残業三昧で殺伐とした会社を除けば、案外そんなに悪いことにはならないものです。

残業が多いと心の余裕をなくすので、断るということに対して怒る人もいるかもしれません。しかし残業もそこそこ(月20~30時間くらいなど)でまっとうな会社なら、そこまで無茶に押し付けるような人はいないものです。

事情さえ説明すれば、いい人は案外多いものです。無理な仕事は黙って引き受けず、「申し訳ないですけどこういう理由でこうしていただけませんか?」と言うだけ言ってみましょう。これがアサーティブな自己表現です。

決して「これ以上仕事を頼まれても無理だよ!こっちは忙しんだよ!」と言ってはいけません。こう言いたくなる人は多いでしょうし、忙しい人に仕事を頼むとこういう風に怒られる可能性はあります。

しかしこれは攻撃的自己表現ですので、人間関係を悪化させます。極力避けましょう。

リスクが高い仕事を依頼されたとき

問題

Gさんはシステム部門に勤めています。

Gさんはユーザー部門のHさんからX機能の改善要望を受けました。画面の表示の解りやすさや操作性を改善してほしいという内容です。

GさんはX機能のソースコードを調べてみました。そしたらX機能を要望通りに修正するには、技術的にやり方を変えなければいけないことが解りました。

そして今回想定しているやり方を採用すると、工数が大きくかかる上に、影響を受ける機能も多いことが解りました。

1機能だけ改善するのに影響範囲が広いとあっては、効果の割にリスクが大きいです。またテスト範囲が広いだけでなく、やり方を変えるために技術検証も必要です。

これもまた私が考えた解答例を書きます。あなたも上手に断る方法を考えてみてください。

解答例

Gさんは改善要望を分解しました。するとX1~X5に分解できました。それぞれリスクや工数を洗い出しました。リスクや工数が低いものを今回対応し、まとまった予算が出たときに大きめの開発として残りの機能を対応しようと考えました。

GさんはHさんに連絡しました。

Gさん「X機能の改善ですが、改善内容をX1~X5に分けられます。X3とX4はすぐに対応可能ですが、他は影響範囲が広くて技術的なやり方も変えるのでリスクが高いです。また工数もかかります。とりあえず今回はすぐできるX3とX4だけやって、残りはまとまった予算が出たときにやろうと思います。X3とX4だけでも解りやすさは向上すると思います」

Hさん「なるほど、それならそれで仕方ないか。じゃぁX3とX4だけでも頼むよ」

Gさんはなんとか難を免れました。

今回は依頼された作業を分解して、簡単な作業だけやるという方法でしのぎました。しかし作業を分解しても、残念ながら全て難易度が高くてすぐにはできないという場合もあります。

その場合は「X1~X5まで改善内容を分けてみましたが、いずれもリスクや工数が高くなるため、今すぐ対応することは難しいです。すみませんが次の開発予算が出るまで待っていただけますか?」などと答えることになるでしょう。

投資対効果が低い仕事を依頼されたとき

問題

Gさんは今度はHさんとは別のユーザー部門のIさんから機能追加の依頼を受けました。

IさんはYという機能を作って欲しいとのことです。今はデータを1件ずつ画面から入れているのですが、ExcelやCSVでまとめてインポートできると嬉しいとのことです。

GさんはIさんの要望を詳しく聞いてみました。するとデータを登録するのは四半期に1回で、利用者はYさんだけ、しかも1回当たり20件くらいとのことです。

節約できる工数は四半期に2時間、年間8時間です。一方で開発工数を見積もったところ、40時間でした。

これでは元を取るのに5年かかります。手が空いているときならいいですが、Gさん他システム部門のメンバーはフル稼働中です。というわけで投資対効果が低いため断ることにしました。

私が考えた解答例を書きます。あなたも上手に断る方法を考えてみてください。

解答例

Gさん「申し訳ないですけど、Y機能は投資対効果が低いので、優先度は低くして余裕があったら作ることになります。ちょっと今システム部門は手が一杯ですし、利用者が多い機能の開発も色々と引き受けていますので」

Iさん「Y機能ができると面倒な手作業が減って便利だけど、確かに四半期に1回だし。他にもっと利用者が多い機能があるなら、こっちは後回しでも仕方ないか」

このように投資対効果が低い仕事はできるだけ断るようにしましょう。コストに見合わないですし、残業も増えますので。

アサーションに関する個人的な意見

「人を動かす」も相手に配慮する本

アサーションの教科書を読んでみて、カーネギーの「人を動かす」という本を思い出しました。

人を動かす文庫版 [ デール・カーネギー ]

「人を動かす」では、人に動いてもらいたかったら相手にとって気分がよくなる言い方をせよと説いています。アサーション以上に相手の気分を考慮せよというように感じます。

また「人を動かす」では多くの人が相手に動いてもらうために命令や強制などの方法を取ってしまうとも書かれています。アサーションで言うところの攻撃的自己表現ですね。

攻撃的自己表現を使わないようにするにはEQも求められると感じますが、できるだけ使わないように気を付けていきましょう。そして相手の都合も考慮してアサーティブな自己表現をしていきましょう。

相手に配慮することで協力関係を築ける

仕事では自分の都合ばかり押し通して、「仕事だからやれよ!」と言う人もいます。しかしそういう言い方では仕事だから仕方なく言うことを聞きますが、困ったときに協力してもらえません。

私は自分のチームのメンバーや顧客、協力会社に対する態度は重要だと考えています。

下請けに対して「仕事だからやれよ!」という高圧的な態度を取る元請けは少なくないでしょう。

IT業界ではユーザー企業とITベンダーのケンカもよくあります。お互いが「お前らのせいだ!」と言い合うのです。そしてケンカになると、ITベンダーがぼったくりのような見積をユーザー企業に吹っ掛けたりもします。

そういう現実もあって、関係各社に対する接し方の記事も書いています。アサーションもこのように相手を不快にさせないよう配慮しながら、自分の事情や都合を伝えていく方法です。

終わりに

今回はアサーションを使って仕事を上手に断る方法について書きました。

まず最初にアサーションとは何か、アサーションの種類を解説しました。そしてアサーションが実現しているアサーティブな組織と、アサーションが実現していない非アサーティブな組織についても解説することで、アサーションに対する理解を深められるようにしました。

アサーティブな組織と非アサーティブな組織を想像すると、アサーションに則った自己表現が解りやすいでしょう。困ったときはこれを思い出してください。

最後に例題として仕事を上手に断る方法について解説しました。無理して引き受けるとか怒ってしまうのは非アサーティブなのでNGです。

でもただ断るのではなく、相手も納得できるか無駄足にならないように配慮してあげることが重要です。こうすれば自分の都合も主張できて、相手にとっても悪くない結果になります。

仕事を上手に断ることは難しいですが、アサーションを活用して上手く断れるようになりましょう。きっと今より健全な働き方ができるようになるでしょう。

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