MECEの解りやすい例を仕事でよくやる作業で解説
MECEという考え方があります。文章を書くときや作業項目を洗い出すときに使えるという話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
ロジカルシンキングの勉強をするとよく出てくるMECEですが、仕事でも使われることが多い考え方です。
今回は仕事でありそうな作業を5つ挙げ、MECEを使った例を紹介します。MECEとは何かを覚えるだけでなく、使いこなせるようになりましょう。
特に次のような方に参考になるように書きます。
- 新人
- スキルアップを考えている方
- ロジカルシンキングを学び始めた方
- 仕事術を学ぼうとしている方
- MECEの使い方を知りたい方
それでは始めましょう。
MECEとは
MECEは元々は戦略コンサルファームのマッキンゼーが提唱した考え方で、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略です。日本語にすると漏れなくダブりなくという意味です。
漏れなくということは、見落としている項目があってはいけないということです。
例えば旅行に行くのに忘れ物があると大変ですよね。忘れ物があったということは、必要なものの洗い出しか、荷物の準備のどちらかに漏れがあったのです。
漏れがあると後で困ります。旅行なら必要なものが足りないので、現地調達する必要があります。仕事ならやり直しになります。
ダブりなくというのは、同じ意味・内容の項目を複数列挙しないということです。
例えばファミレスのメニューを考えるとき、カテゴリーとして和食と麺類があったらダブりがあるでしょう。和食にも麺類にもうどんと蕎麦があると考えられるからです。本当にあったらダブりです。
商品を作ったり、イベントを企画したりしたときに、メインターゲットは子どもと考えたとしましょう。ここでターゲットの洗い出しで子どもと小学生と書いてしまうとダブりがあります。小学生は子どもでもあるからです。
子どもと言えば幼稚園・保育園も含み、中学生や高校生も含みそうですね。この場合は子どもだけとするか、具体的に小学生と中学生とするかですね。
MECEを使うメリット
漏れを減らせる
MECEは漏れなくダブりなくという意味です。よってMECEを使うメリットの1つは漏れを減らせることです。
仕事において漏れがあると、やり直しになってしまいます。やり直しになれば残業も必要になるでしょうし、モノづくりなら材料も多く必要になります。
作業のやり方を間違えてやり直しとなれば、作ったものを修正する必要があります。資料の頑張って書いた箇所をごっそり消したり、作った製品を分解したりする必要もあるでしょう。
仕事において漏れがあってやり直しになることはとても悲しいことです。そう考えるとMECEによって漏れを減らすことはとても効果的だなと私は考えます。
ちなみにMECEによって「漏れをなくせる」ではなく「漏れを減らせる」と私が書いている理由は、人間は完璧ではなくミスをするから、完全に漏れをなくすことは不可能だと考えているからです。
ダブりを減らせる
MECEを使うメリットの1つはダブりを減らせることです。
仕事においてダブりは漏れほどの影響はないでしょう。しかし重複した作業をやってしまっては余計な工数がかかってしまいます。できるだけ無駄を省いて効率化した方が工数を抑えられます。
また情報の整理という面でも、ダブりなく一覧化できれば解りやすいでしょう。作業や観点、課題などを洗い出していると、類似の行が出てくることがあります。こういうのはダブりですので、統合してしまいましょう。
ダブりに関しても、「ダブりをなくせる」ではなく「ダブりを減らせる」と書いています。これも漏れと同様に人間は完璧ではなくミスをするから、完全にダブりをなくすことは不可能だという理由からこう書いています。
着手前に整理できる
MECEを使うことで、作業に着手する前に必要な情報や作業内容を整理できます。
仕事において作業前の準備は大事です。いきなり手を動かしても、あれもこれも足りないということになります。これでは段取りが悪いということになります。
よって作業前に必要な情報(要件や仕様、設計情報、テンプレート、利用者や利用シーンなど)を整理し、作業手順や必要な道具を整理しましょう。また作業内容や作業手順を整理しましょう。
こうした方が無駄なく効率的に作業を進められることは想像できると思います。家具やプラモデルを組み立てるのに、マニュアルを読まずに勢いでやっても上手く行きません。それと同じことです。
MECEを仕事で使う例
作業項目の洗い出し
仕事においてMECEが特に役立つのが作業項目の洗い出しです。必要な作業を漏れなく洗い出すことは、やり直しなど後でトラブルが発生する可能性を抑えることにつながります。
ここではより多くの方にとってなじみがあろう週報や月報を書く場合を例にしてみましょう。
週報や月報などの一定期間での報告を上げる場合、報告相手や報告内容について、社内のルールやテンプレートを確認する必要があります。
報告相手は直属の上司だけなのか、上司に加えてメンバーにもCCなどで共有するのかなどを考える必要があるでしょう。またプロジェクト型の仕事が多い会社では、プロジェクトマネージャーと上司の両方に報告するのか?という確認も必要です。
他にも案件内の作業や進捗、課題なども洗い出す必要があります。考えれば考えるほどに作業項目はあるでしょう。
例えば次のように洗い出したとします。
- 案件名の記載
- 報告相手の確認
- 報告方法の確認
- 報告方法について社内ルールを確認
- 報告内容について社内テンプレートを確認
- 案件で行っている作業の一覧を洗い出し
- 作業毎の進捗状況を確認
一見ちゃんとしてそうですが、よく見てみましょう。
まず「報告方法の確認」と「報告方法について社内ルールを確認」はダブりです。どちらも同じことをしそうです。
それから漏れとしては「課題の確認」があります。仕事が順調に進んでいれば、進捗状況もオンスケ(オンスケジュール、つまりスケジュール通りの略)でしょう。
しかし問題や課題が発生して進捗が遅れている、あるいは遅れそうであれば困りものです。そのような場合は上司が対策を考える必要があります。
よって上記の作業項目一覧を漏れなくダブりなく修正すると、次のようになります。
- 案件名の記載
- 報告相手について社内ルールを確認
- 報告方法について社内ルールを確認
- 報告内容について社内テンプレートを確認
- 案件で行っている作業の一覧を洗い出し
- 作業毎の進捗状況を確認
- 作業毎の問題・課題を確認
項目の分類
扱う情報や項目が多い場合、分類を行います。アイディアを出す場合も、似たようなアイディア同士を同じカテゴリーとして扱いますし、プロジェクトにおける課題一覧などもカテゴリーという項目があります。
さらには製品などもカテゴリーがありますよね。家電だったり、日用品だったり、食料品だったりと。食料品でも分類すると生鮮品や加工品などがあります。
このように仕事においては扱う情報や項目が多くなるゆえに、カテゴリーによって分類することで解りやすくできます。
例えば次の動物たちを分類してみましょう。
- 狸
- 狐
- チーター
- 猫
- 犬
- ライオン
- 狼
- 虎
分類すると次のようになります。
科 | 種族 |
---|---|
イヌ科 | 狸 |
狐 | |
犬 | |
狼 | |
ネコ科 | チーター |
猫 | |
ライオン | |
虎 |
分類すると覚えなければいけない情報量を減らせます。これが分類のメリットです。
文章の執筆
文章の構造を決めるのにMECEが役立つ
文章を執筆する際にもMECEは役立ちます。
文章を書くときは、書くべき内容を洗い出し、構造を決めます。
書籍やブログ、Wordの資料などを想像してみてください。目次がありますよね?つまり書籍やブログ、Wordの資料などに文章を書く場合は、情報を構造化しているのです。
会話なら順番に話が流れていくのでもいいです。しかし文章の場合は、それではまとまりがないので、読み手がまとめることになります。それでは読み手にとっての負担が大きいため、読み手は疲れてしまいます。
そこで文章では目次を作ることで、情報を構造化して整理しているのです。こうすることで読み手が書かれていることを自分でまとめる負担を大きく減らせるのです。これが結果的に読みやすい文章につながります。
そして目次を作る上でMECEが役立つということです。複数の章で同じ話がでてきたり、肝心な話が抜けていたりしてはまずいでしょう。
例えば困ったことが起きて上司に相談する場合を考えてみましょう。
ただ順番に思っていることを書くと長ったらしくなり、上司も疲れてしまいます。そこで次のような項目単位で文章を書くのも手です。
- 案件名
- タスク名
- 問題・課題の概要
- 問題・課題が発生した経緯
- 影響範囲や影響度
- 現在打っている対応策
メールで相談する場合は、ダラダラ分けて書くよりも、こういう見出しを付けてメールで書いた方がいいでしょう。会社によってはExcelでこのよう項目があるテンプレートを作っているかもしれませんね。
書籍やブログの見出しを考えるにもMECEが役立つ
書籍やブログの見出しも同様です。例えば次の記事では、解説したい知識であるアサーションについて、アサーションとは?から始まり、事例を挙げています。そして例題を出すことで理解を深められるようにしています。
もし上記のアサーションの記事において目次がなかった場合を考えてみてください。解説→事例→例題の流れを読み手が整理しながら読まなければいけません。文章量を考えるとかなりの負担です。
こう考えると、文章は構造化した方が解りやすいのです。そして文章の構造化の際にMECEが役立つのです。更には仕事において文章を書くシーンは多いです。それこそ上司やチーム、顧客とのコミュニケーションなどは日常的に発生しますので。
販促のターゲットの洗い出し
販促などマーケティングにおいてターゲット顧客を洗い出すときにもMECEを使えます。
1つの属性で分類する例
例えばありがちな例ですが、年齢で顧客を分類するときを考えてみましょう。
年齢で分類するなら次のようになるでしょう。
- 10代
- 20代
- 30代
- 40代
- 50代
- 60代以上
ここで60代、70代と続けるとどこまで続けるのかとなるので、60代以上としています。現代では60代はアクティブな人が多いので、60代と70代以上に分けた方がいいかもしれません。
また10代より下の0~9歳が上記のリストには入っていません。これは漏れですね。そこで9歳以下が買いものをするのか考えてみましょう。
小学生だったらお小遣いでお菓子やおもちゃを買うことはあると思います。ということは販促したいお店や商品によっては、0~9歳も加えた方がいいということになります。
このように候補を洗い出してMECEになっているか考えることで、漏れやダブりをなくせます。今回のように販促ターゲットを漏れなくダブりなく洗い出すというときにもMECEは役立つのです。
複数の属性を組み合わせて分類する例
次は年齢と性別、職業による分類を考えてみましょう。大人の女性向けの商品を作り、ターゲットを検討した結果、次の2つの候補に販促を打つとします。
- 30代女性会社員
- 40代女性会社員
- 30代主婦
- 40代主婦
一見、30代と40代の働く女性と家庭に専念している女性をターゲットにしているように見えます。しかし上記の分類はMECEで考えるとダブっています。
まず主婦ですが、専業主婦、パート主婦、時短勤務の会社員をやりながら主婦をやっている人などが考えられます。よって主婦かつ会社員がありえるのです。ということは30代会社員と30代主婦、40代会社員と40代主婦の組み合わせの中にダブりが存在する可能性があります。
30代だと子どもがいる場合は子どもがまだ小さくて家庭に専念している可能性もあります。しかし40代だと子どもがある程度大きくなっていて、パートや時短で働いている可能性が高くなるでしょう。
また子どもがいなくて夫婦共働きだけど、妻側の方が労働時間が短くて家事の負担も大きめというケースもあるでしょう。
この例は分類がとても甘くて、MECEでもっと詰めた方がいい例です。あるいはシンプル化もありです。働いているかどうかに関わらず大人の女性にとってメリットがある商品というのなら、年齢と性別だけで十分かもしれません。
アイディアのグループ化
集めたアイディアをグループ化する際にもMECEが使えます。なぜなら意味が似ている者同士すなわちダブりのようなものを洗い出せるからです。
意味が似ているアイディアを組み合わせてグループ化すれば、沢山集めたアイディアを少ない数のグループに分類できます。
アイディアを出すこととグループ化することについては、別途記事を書いていますので、参考にしてみてください。
終わりに
今回はロジカルシンキングの基本であるMECEについて、例を挙げながら解説しました。
MECEを学ぶにはロジカルシンキングの本を読むのが手っ取り早いです。大抵のロジカルシンキングの本には登場するでしょう。ここではロジカルシンキングの方法を広く網羅したグロービスの本を挙げておきます。もちろんMECEを解説している本は他にも沢山あります。
グロービスMBA集中講義 [実況]ロジカルシンキング教室 [ グロービス ]
MECEは仕事でも使うシーンが多いです。しっていると仕事に役立つ考え方でもあります。是非仕事力アップのためにMECEを身に付けてください。
またMECE以外にもロジカルシンキングの方法には仕事で役立つものが沢山あります。ロジカルシンキングの勉強をすることは、手っ取り早く仕事力を上げることにもつながりますので、是非勉強してみてください。