宇都宮LRTに乗車して感じたデザイン面で良い点
宇都宮LRTの構想が持ち上がってから数年、ついに開通したというニュースを見たので乗ってきました。
実際に乗ってみたら、乗客は多いし快適だしで、意外といいなと感じました。またデザイン面で良いと感じる点がいくつか見つかりました。
今回は宇都宮LRTに実際に乗ってみて、デザイン面で良いと感じた点を5つ挙げます。
デザイナーやデザインに興味がある方は勿論、デザインを勉強している方、宇都宮LRTのような交通機関に興味がある方や観光に興味がある方にも参考になれば幸いです。
駅名表示の看板で駅周辺の特色を紹介
駅のホームには駅名と隣の駅名が表示されている看板があります。駅名標と呼ぶようです。宇都宮LRTにももちろんあります。
宇都宮LRTでは駅名標の下にある壁面に駅周辺の特色を表す写真が使われています。全ての駅で違う写真が使われているのです。
駅名標と言うのはこれですね。駅名の下に6枚の写真があるのですが、人が沢山映り込むので撮るのを諦めました。私が撮ったこの写真では、大谷石が少し映っています。
こちらの記事に駅名標の壁面デザインの写真があります。宇都宮駅東口なら宇都宮の売りである餃子やカクテル、ジャズ、自転車競技、バスケットボールなどの写真です。
ちなみに駅名の真下にある大谷石は採石場なのですが、メジャーアーティストがMVの撮影に使ったこともあります。有名どころだとX JAPAN、GLAY、B’zなどですね。
私は鉄道には詳しくないのですが、首都圏に住んでいても旅行に行っても、駅名標の壁面に駅周辺の特色が解る写真が使われているのを見たことがありません。せいぜいポスターが駅構内に貼られているくらいでしょう。
壁面デザインに写真を使うことで周辺の特色を表せば、観光客へのアピールになります。また地元の人にとっても馴染みのものが紹介されていれば嬉しいかもしれません。
よって宇都宮LRTの駅名標の壁面デザインは先進的なデザインと言えそうです。ただし高クオリティの写真を印刷するコストは高そうですね。
整理券の発行機がホームにある
宇都宮LRTは現金とICカードの両方が使えます。路面電車(厳密にはこういう分類ではないようですが)なので、実は改札と言うものが存在しませんし、スペース的にも作れません。
現金の場合はバスのように整理券を取り、ICカードの場合はタッチします。しかしこの方式だと、乗車時に現金の人が多い場合に乗車時間が伸びてしまいます。
そこで宇都宮LRTではホームに整理券の発行機があります。これで乗車に時間がかからないようにしているわけですね。
もし20~30人が順番に整理券を取って乗っていたら、1人3秒くらいでスムーズに取れたとしても、1分かかります。これが高齢者でスムーズに取れないとなると、2分くらいに伸びてしまうかもしれません。すると遅延につながってしまいますね。
現金払いの場合の説明ページも公式サイトにありました。
LRTの乗り方 | MOVE NEXTうつのみや LRTからはじめる、次の暮らし
どうやら現金払いの場合は先頭の車両にしか乗れないようです。確かに現金を払う場所が後ろの車両にはなかったです。ICカードを使った方が便利ですね。
改札を作れないという制約の中で、現金払いをスムーズにするには、どういう形や仕組みにするか?こういう問題解決もデザインやクリエイティブの仕事ですね。
ICカードのタッチ位置が解りやすい
宇都宮LRTに乗るときはICカードが便利です。ちなみに私は首都圏に住んでいるのでPASMOを使っていますが、PASMOでも乗れました。
宇都宮LRTはICカードのタッチ位置のデザインも良いと感じました。
宇都宮LRTでも一般的な電車の改札のように、ICカードリーダーは乗車と降車で別れています。
宇都宮LRTでは乗車のICカードリーダーは下にあり、周辺が緑色になっています。更には車内方向へ向かって矢印も付いています。文字色は白です。
降車のICカードリーダーは上にあり、周辺が黄色になっています。車外方向へ向かって矢印が付いています。文字色はグレーです。
公式サイトにもICカードでの乗り方の説明があります。この写真を見ていただくと、乗車と降車で色、矢印、文字色が違うことが解ると思います。
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乗車と降車は駅の改札だと手前に来るようになっているので問題ありません。タッチしないと扉が閉まって入れないですし。
しかし改札を作れない宇都宮LRTでは、解りやすくする必要があります。解りやすくするときはデザインの出番です。
ICカードのタッチ位置のデザインについて、乗車と降車の違いをもう一度まとめてみましょう。
乗車 | 降車 | |
背景色 | 緑 | 黄色 |
矢印 | 車内方向 | 車外方向 |
文字色 | 白 | グレー |
デザインのポイントについても考えてみましょう。背景色を使うことで、記憶しやすくなります。また矢印があることで乗車か降車かが解ります。
ただ単に乗車、降車と書いてあるよりは、背景色と矢印があることで、断然解りやすくなっていると私は感じます。
もし単に乗車、降車しか書いてなかったり、色を使っていなかったりしたら、慣れるまでは間違えてしまいそうです。慣れていない人でも乗れないとまずいでしょう。
人間はミスをするものです。ミスをしにくくするためにはデザインの力で解りやすくすることが有効です。
車両の接続部分が広い
一般的な電車では車両の接続部分(貫通幌と呼ぶ)は狭く、人が一人しか通れません。ここ10年以内に登場した新しい車両ですと、透明な窓がついていて、すれ違うくらいの幅があるものもあります。
しかし宇都宮LRTは接続部分が車内と同じ広さなのです。接続部分だからといって一切狭くなっていませんでした。段差すらありませんでした。
だから座席が空いていない場合は、車両の接続部分に普通に立っている人がいました。段差も隙間もできないよう、よくここまでキッチリと接続できるように作ったなと感心します。
こういう細かい部分のデザインでも車両の広さや快適さを上げられます。車両の接続部分が車内と同じ広さになっているおかげで、車内がとても広く感じられます。広い車内は快適ですね。
ホームの位置が低い
バリアフリーを意識してか、宇都宮LRTのホームの位置は低くなっています。ホームの高さは30cmです。とても低いですね。
これなら足腰が衰えた高齢者や車椅子の方も、普通のホームのような1mくらいの高さよりも楽に上がれるでしょう。階段も不要ですし、30cm程度の高さの坂道は特に気にせずに歩けるものです。
初めて見たときは本当に驚きました。低い!と感じました。写真も撮りましたので貼ります。
高齢社会の移動手段ということもあって、こういうバリアフリーで乗りやすいデザインが考えられているわけですね。
これだけ床の位置が低い車両を作るとなると、駆動系部品の位置が問題になります。配置方法を工夫することで解消しているようです。
終わりに
宇都宮LRTは新設路線であり、車両も新規に設計・製作したものを使っています。それゆえにデザイン面で工夫や関心できる点を感じました。
機会があればみなさんも宇都宮LRTに乗ってみてください。
こういう新しいモノづくりや、高齢社会やバリアフリー、観光などのような問題を解決する上で、デザインの力は有効です。
デザインは相手があってのものなので、使う相手にとってどうだったらいいか、どう感じてもらうかを考えることでもあります。
今後もデザイン面で良いと感じられるものを探して紹介していけたらと考えています。
また宇都宮LRT以外にもデザインの事例を紹介する記事を書いています。こちらも読んでみてください。