残業がないホワイト職場では成長できないなんて間違いだ

最終更新日

ホワイト職場では成長できないなんて間違い

ここ1年くらいで、ホワイト職場に入った若手が、仕事がつまらなくて成長できないからという理由ですぐに辞めてしまうというニュースを目にしました。

「ホワイト企業」なぜ辞めたい?若手社員の“理想の職場”にする3つの方法

「ホワイトすぎる職場」とは?なぜ若手社員は退職してしまうのか

「ゆるい大企業」を去る若手たち。ホワイトすぎて離職?働きやすいのに“不安”な理由

残業しないと成長できないというニュースが多く、厳しく説教されないと成長できないというニュースもあるのが気になる点です。本当にそうでしょうか?大事なのは挑戦と失敗が許され、裁量が与えられること、そして仕事の量より質です。

今回はこれについて私の意見と実体験を書いていきます。決して叱責され説教され、脅されて意見も言えない、残業も多いブラック職場の方が成長できるなんてありえませんし、ホワイト職場でもホワイトな働き方でも成長はできます。

職場がホワイトすぎることに疑問を感じている方に読んでいただければ幸いですが、ブラック職場に勤めている方にも読んでいただけるといいと思います。

職場がホワイトだから若手が辞めるというニュースに違和感がある

ホワイト職場の特徴がおかしい

ホワイト職場だからというより適性の問題もある

そもそもホワイト職場ってどんな職場でしょう?一般的には残業が少ない、説教されない職場とされています。そしてそれが悪い職場だというのです。

このニュースの例で言えば、そもそも仕事が向いている/向いていないの話であって、残業の多い/少ないではありません。捉え方の違いですね。

「ホワイト企業」なぜ辞めたい?若手社員の“理想の職場”にする3つの方法

経験が浅いうちから高度なことはできない

このニュースのように、学生時代の経験と会社でやることに乖離があるのは解ります。確かに学生時代の濃い経験を活かせる仕事はそれなりに実務経験を積まないとやらせてもらえません。

「ゆるい大企業」を去る若手たち。ホワイトすぎて離職?働きやすいのに“不安”な理由

しかしそもそも仕事は一通りのことができるようになるまで10年はかかるものです。そこから深みを増すのにさらに10年かかるので、強みとなる専門性があって、大抵のことができるようになる頃には20年経っています。ベテラン社員や熟練職人が強いのは、これだけの積み重ねがあるからです。

最初から高度な仕事をしたいなんて言ってもやらせてもらえません。やらせてもらえないから転職するなんて言っても、どこに行ってもやらせてもらえず、スキルアップできずに時間だけが過ぎてしまいます。

まずはしっかりと基礎を積み重ねることが大事です。

受け身な働き方ではいけない

またこちらのニュースは明らかにおかしいと感じます。

「こんな仕事のために…」新入社員が1年で退社、ホワイト企業が“ゆるいブラック”と化す理由

いずれにせよ、説教されないことや残業が少ないことが成長につながらないということがおかしいです。これは若手にも古い根性論重視の考えが染みついていることを意味しています。

また仕事を言われたことだけやるものと捉えているようにも感じます。そんな受け身な姿勢ではどうやっても大して成長できません。自分から自分にできることを探したり、せっかく残業が少ないなら勉強に励んだりしましょう。

残業が少なく、心理的安全性が確保されることはマネジメントとして当たり前のことだと私は考えていますし、実践しています。

ブラックなら成長できるなんておかしい

では上記のニュースと逆のブラック職場を考えてみましょう。

ブラック職場がいいなんて大間違い

毎月残業時間が80時間発生し、毎日のように先輩や上司から怒鳴られるとします。仕事は次から次へとわいて出て、毎日終電で帰り、休日出勤も珍しくないとします。

こんな職場で働くと成長できるっておかしくないですか?私はそう思います。こんな職場の何が良いのでしょうか?

とはいっても若手の言い分に関するニュースなので、会社とはどういう場所かを知らずに想像で言っているというのもあります。会社って会社毎に違うので、色々な会社を見てみないと文化とか体質、プロセスの違いなどが解らないものなのです。

ブラック職場は根性論重視で技術や方法論を軽視するから成長につながらない

ついでに言っておくと、残業が多くて説教も多い職場は、根性論が大好きで理論や方法論を考えない、あるいは否定的な人が多いです。勉強なんて下らない、沢山手を動かしている人間が偉いという考えです。私がいくつもの会社を見てきたところ、ブラック職場は大抵こういう考えです。

ちなみに勉強に前向きな会社と否定的な会社についてはnoteに記事を書いています。

勉強に対する会社の意識と勉強することの効用

勉強せず、新しい技術や方法論を身に付けずに、根性論で長時間労働を繰り返す職場で何が身に付くのでしょうか?根性や忍耐、長時間労働に耐える耐性を身に付ければ社会人として成長するのでしょうか?

私はそんなものを身に付けるよりも、最新の技術や方法論を身に付けた方が役立つと考えています。また自己研鑽の時間を取れた方が、視野が広まると考えています。ブラック職場に勤めていたらこれらのことができず、井の中の蛙となってしまいます。VUCAの時代では茹でガエルです。

これは私自身がそういうブラック職場に不本意にも入ってしまった経験があるから言っていることです。そういう経験もあって私はホワイトなマネジメントを心掛けているのです。

もっとも戦略コンサルや商社、広告代理店のように密度の高い仕事を長時間やってスキルアップできる会社もありますが、そんな会社ばかりではありません。多くのブラック職場は上記のように根性論で学が無くていい加減です。

人が活躍する職場はホワイトだ

日本で一番大切にしたい会社という本があります。この本は従業員満足度が高くて業績も高い中小企業を紹介している本です。

この本に出てくる多くの企業では、従業員は決して会社や社長の命令では動いておらず、自主的に顧客に貢献し、会社の仲間や社長を助けています。

主体的に動けて業績も上げられる、能力もモチベーションもある従業員が揃っている会社が出てくるのです。

そして著者がこの本に会社を載せる条件の1つに、平均残業時間が10時間以内という条件があります。残業が少ない方が従業員を大切にしており、大切にされた従業員はモチベーションが上がって成果を出せるようになるのです。

日本でいちばん大切にしたい会社7 [ 坂本光司 ]

私自身も長年マネジメントをしているから解ることがあります。仕事なんだから働け!とか、沢山残業している方が頑張っているんだ!と言って、メンバーのモチベーションは上がりません。

メンバーが勝手に成長して、勝手に何でもやってくれるなんてことはありません。自分がちゃんと教えて育てることが大事です。育成は投資です。時間と労力をかけて教えれば、戦力になって自分が助かります。

ミスする度に失跡したり、責任を押し付けて怒ったりしてメンバーのモチベーションが上がるなんてありえません。私はそんなことはしたことがありませんが、されたことは何度もあります。

ブラック職場の方が成長できてモチベーションも上がるなんておかしな話です。そんな話はブラック企業を賛美し、長時間労働や根性論を肯定し、勉強を否定しています。

つまり成長できるかどうかは労働時間の長さや説教の数ではないのです。多くの人にここを知ってもらいたいと思います。

ホワイト職場で成長する方法

ホワイト職場で成長できないという考えは意識に問題があること、ブラック職場では成長できないことを書きました。次はホワイト職場で成長する方法を書きます。

残業の少なさを活かして勉強しよう

この記事にも書いていますが、ホワイト職場で残業が少なければ、勉強の時間を取ることができます。最新の技術や自分の業界で流行っていること、最新の方法論や基礎的なことなどなど、自分の仕事をよくするために勉強することは山ほどあります。

より新しい技術や方法論を学ぶことが重要なのは言うまでもないでしょう。世の中の変化は速いですから、古い技術や方法論に固執していては、生産性が低いままになりますので、世の中から置いて行かれてしまいます。

基礎知識の勉強は侮れないのでしっかりやろう

また意外と侮れないのが基礎的なことです。専門分野でもビジネススキルでも、基礎的なことは侮れません。進歩の速いIT業界でも、コンピューターが動く仕組みや、サーバーやネットワークの基礎知識は役立ちますし、こういう基礎知識が土台となっています。

クラウドだってサーバーを置く場所が社内のサーバールームからクラウド事業者のデータセンターに変わり、社内回線ではなくインターネットを通してつながるようになっただけです。技術的には単なる場所の違いだったりします。

ビジネススキルだって、ロジカルシンキングやライティング、コミュニケーションなどは学んでおいてそんはありません。どんな仕事でも役立ちます。専門性にばかり囚われて、これらを疎かにしている人は少なくないです。

人に協力してもらうための勉強もある

また経験を積んでマネジメントや企画など人との関りが多い仕事に就いたとき、人間性やEQがモノを言うこともあります。人間性やEQは仕事の専門性とは別物です。これらのために専門的なこととは違うことを勉強する必要性が出てきます。

いわゆるリベラルアーツのような多様な価値観や思考力を身に付けるための勉強や、心理学のように対人スキルのための勉強をする必要があります。

またプライベートでサークルやボランティアなどサードプレイス的な場所に入って、業界や職種を超えて色々な人と話すことも勉強になります。対人スキルアップのためには、こういう場所も活用しましょう。

残業続きでは自己研鑽の時間が取れない

残業が多い職場の特徴

先ほども書きましたが、ブラック職場に入れば難易度が高い仕事を沢山やって、沢山働いてスキルアップできると思ったら大間違いです。

大抵のブラック職場は根性論や長時間労働を賛美し、勉強を否定し、技術や方法論や知識に否定的です。何でも根性と長時間労働で解決できると考えていますし、勉強している暇や考えている暇があったら、手を動かせという考えです。

残業が多い職場はほぼ間違いなくマネジメントに問題があります。マネジメントに問題があると、不毛な残業が沢山発生します。ましてや説教や叱責でモチベーションやスキルは上がりません。

根性論で残業を常習的に発生させることがいかに問題かは、こちらの記事に書いています。

経営学で見てもブラック職場はおかしい

経営の勉強をしたことがある方ならご存じだと思いますが、ブラック職場の方が優れていることなんてありません。

根性論で長時間労働をしたって、効率が悪いだけです。経営目線で見れば、効率的なことに集中した方が稼げます。強みを伸ばした方がいいですし、より効率的になるような改善活動や設備投資、必要なノウハウの開発、必要な知識に関する従業員教育などが必要です。

ブラック職場はこういうものを全て捨てて、根性論で長時間労働をしています。改善や設備投資なんてしなくてもひたすら頑張ればいい、勉強なんてしても無駄だから手を動かせといいます。こんな場所でモチベーションやスキルは上がりませんし、ましてや成長とは理不尽に対する耐性ではありません。

自己研鑽をすることが大事

成長を目指すなら、長時間労働をするよりも仕事の質を高めていくことが大事です。知識と実践の組み合わせが大事であり、闇雲に大量の作業をこなせばいいのではありません。まず上手いやり方を学び、反復練習するのです。

そういう意味では座学的な勉強も必要ですし、職場をホワイトかブラックかで選ぶのではなく、自分が身に付けたいノウハウについてレベルがどれほど高いのかで選ぶ必要があります。

さらには本業でやれないけど気になっているテーマや、業界で最近流行っていることなど、スキルアップのために学べることは沢山あります。

職業人としての成長とは、長時間労働に耐えて沢山量をこなすことではありません。より高度な仕事ができるようになることです。そのためには長時間手を動かすことよりも、高度なノウハウを持った会社に入って、そのノウハウを吸収することや、勉強することが大事です。

本業の仕事だけでは幅が広がりません。本業以外の時間で勉強することは山ほどあります。だからこそ本当に知識やスキルを身に付けていい仕事をしたいのであれば、残業なんてしてる暇はありません。

どんな仕事も意識次第

同じ仕事でも意識で違う

どの本だったか忘れてしまいましたが、3人のレンガ職人の話を読んだことがあります。家を建てている3人のレンガ職人の前を通った人が、「何をしているんですか?」と聞いたら、3通りの返事が返ってきたという話です。

1人目は「見りゃ解るだろ?レンガを積み上げているんだよ」と答えました。

2人目は「家を作っているんだ」と答えました。

3人目は「この家に住む人の夢を作っているんだ」と答えました。

残念ながら日本の社会人は1人目が多いと思います。日本はOECD加盟国の中でも従業員エンゲージメントが飛び抜けて低い国です。

日本の従業員エンゲージメントの低さを考える

私も会社という場所で次のようなことを散々言われてきて、何度も怒られました。

  • 仕事は忍耐
  • 仕事はやりたくないけど仕方なくやるもの
  • 働いたら負け
  • やりがいなんて下らない
  • 仕事は金が全て
  • 仕事に前向きなヤツはバカ

勝手に言ってろと腹を立てたことも何度もあります。他人の価値観に口出しするなと思います。

また仕事に対する愚痴を子どもの頃から散々聞いてきました。残念ながらこういう現実があります。それゆえnoteにも書いています。

振り返ったら自分の道ができていた

だからこそブラック職場を減らし、ホワイト職場を増やした方がいいと私は考えています。そしてホワイトなマネジメントを心掛けています。誰もが無理なく楽しく働けて、自己研鑽の時間も十分取れれば、仕事に対するイメージも変わると思うのです。

意識を変えることで学びの機会を作る

先ほどのレンガ職人の例えで言うと、1人目の意識でやっていては言われたことしかやりません。自分から必要な作業を探したり、自分から学べることを探したりなんてことをしなくなります。

でも残念ながら、我々は子どもの頃から親や先生の言うことを忠実に聞くよう教育され、大人になると会社や上司の言うことを忠実に聞くよう教育されます。社会全体で受け身な人を量産しているわけです。

大事なことは職場がどうだからじゃなくって、自分にとって学びや活躍になることを自分から探しに行くことです。それから自分にできる精一杯のことは何かを常に考え続けることです。

言われたことだけやる受け身な姿勢では、どんな会社にいても大した学びは得られません。そんな姿勢ならブラック職場でビシバシ鍛えられた方がまだ伸びるのかもしれませんが、そんな下らないことをするよりも意識を変えた方が速いです。

日本人の従業員エンゲージメントの低さから、1人目のレンガ職人のような人は少なくないはずです。ということはちょっと意識を変えるだけで、その他大勢を抜け出して、やる気などいい意味で目立つ人になることは難しくないということです。

雑用からも読み取れることがある

学生のうちは高い志を掲げて社会人を目指している人が少なくないでしょう。しかし会社に入ると、会社が言っている壮大な目標に対して、日々の仕事が雑用だらけということがよくあります。理想と現実のギャップに苦しんでしまう人もいるでしょう。

残念ながらどんなに見た目が華やかな仕事でも雑用は沢山あります。雑用でない仕事だとしても、地味で地道な作業が沢山あるのが仕事です。画期的な製品だって、細かい作業を繰り返して作り、地味で地道なテストを行います。それこそ熟練職人なんて0.1mm単位での加工で凄い製品を作っていたりします。

大事なことはどんな地味で地道な作業でも学びを得ようとすることです。この作業は誰が何のために必要なのかを想像してみましょう。議事録を書く作業だって、関係者は何をしたいのか?関係者が置かれている状況はどんなものなのか?などを把握する練習にしましょう。

下積みなしにいきなり難易度が高い仕事をすることはできません。もしやりたいなら小さくてなおかつ高度な強みがある会社に入るという方法があります。これは私も使った方法で、noteに書いています。

中小・ベンチャーという裏口ルートで素早くスキルアップとキャリアアップをする方法

ITエンジニアを選ぶメリットについて書いてみる

仕事経験が長くなると解ることですが、まだ仕事経験がない学生のうちは、学校と仕事の間に大きな隔たりがあることに気付けません。私も学校と仕事の間にある大きな隔たりを知らずにはまって、とても痛い目を見ました。理想と現実は大きく違うのです。

終わりに

今回はホワイト職場だから成長できないというなんともおかしなニュースを見て、私自身が感じたことを書いてみました。

普段はマネジメントを上手くやる方法について書いていますが、今回ばかりは新社会人や学生向けの記事になってしまいました。

とはいえ成長に必要なのは残業や叱責ではなく、仕事に対する意識や会社が持つノウハウの吸収、日頃の勉強です。そして仕事に対する意識を上げ、勉強時間を確保するためには、従業員を大切にするホワイト職場でなければいけません。

私はホワイト職場とブラック職場の両方を経験し、日頃から勉強をしているからこそこういうことを書いています。

未だに世の中には根性論や長時間労働を正しいとする考えが染みついていますが、若い方々はそんなものに囚われないように気を付けてください。

シェアする