非デザイナーやデザイン初心者におススメの入門書とその選び方
たまにはデザインの勉強をしようと思ってデザイン書を探したら、沢山あることに気付きました。気になったものを片っ端から買って読んでみたら、非デザイナーやデザイン初心者にも解りそうなものもあれば、中級者向けのものもあったり、仕事術に関するものもあったりしました。
デザイン書って意外と沢山あるんだなと気付いたので、今回は非デザイナーやデザイン初心者が読んでも解るものを紹介しようと思います。
また非デザイナーやデザイン初心者がデザインを勉強する上で気を付けた方がいい点も解説します。そうすれば書籍選びの参考になるでしょうから。
そして最後にデザインを学ぶことで得られるメリットについても解説します。デザインは絵を描くだけにあらず、仕事においての活用の幅も広いです。
デザインに興味がある、デザインを身に付けて活かしたいという非デザイナーの方や、デザインの仕事をしてみたいデザイン初心者の方の参考になれば幸いです。
デザイン書の選び方
まずはデザイン書の選び方、初心者がデザインを学ぶ上で気を付けた方がいい点を解説します。
知識が身に付く
デザインというと、センスという生まれ持った特別な才能でやるものだと世間一般では思われています。しかしこれは間違いです。
例えばくまモンや相鉄、中川政七商店のデザインを手掛けるデザイナーは、センスは知識を活用して最適解を作る能力だと言っています。
よってセンスがある/ないは気にせず、知識を身に付けましょう。例えばフォントの種類や性格、レイアウトの仕方、色の特徴や配色などです。
最初はデザインに必要な知識が解説された本を読むことで、デザインはセンスではなく知識を身に付ければできると思えるようになります。
デザインの知識を学ぶ機会があまりないからこそ、デザインはセンスという特別な才能がないとできないと思われているのです。知識さえ学べば、プロが作るデザインを見て、なぜこの表現なのか?や何を使えたいのか?が解るようになります。
本当は知識を身に付けた上で作品を分析したり、手を動かして作ったりしないと上達しないです。しかしまず第一歩として知識を身に付けましょう。
知識を身に付けようという話はこちらの記事にも書いているので、参考にしてみてください。
考え方が身に付く
デザインの知識に加えて大事なのがデザインの考え方です。
デザインはビジュアル的にカッコいいものを作ることではありません。伝えたいことを伝えたい相手に伝えることです。そのために適切な表現を選ぶのがデザインです。
つまりデザインはコミュニケーションなのです。人によっては愛だという人もいるみたいです。私はX(旧Twitter)でデザイナーから「デザインは愛だ」というリプライを頂いたことがあります。
よってデザインの知識を身に付けた後は、デザインの考え方が解説されている本を読むのがよいと私は考えています。
デザインの考え方とは、例えば明るくて元気な表現にしたいならオレンジ色を使うとか、厳格な雰囲気にしたいなら歴史の長い(開発されてから数世紀は経っている)フォントを使うなどです。
こういう表現をするとこういうイメージで伝わるということが解る書籍を選ぶということです。意外と○×クイズの書籍も初心者にはおススメです。私も過去に2冊くらい読みました。
見て解る具体例が付いている
デザインは視覚的なものであるゆえに見て学ぶことが重要です。よってデザインの知識を学んだら具体例が付いている書籍を読みましょう。
ありがちなデザインを解説した書籍もあれば、基本テクニック集みたいな書籍もあります。見て解る具体例が付いた書籍は多いので、パッと見で解りやすいと感じるものを選んでみてください。
見て学ぶことはデザインにおいてとても重要です。美大卒のデザイナーは何が違うかと言えば、美大時代に沢山の作品を鑑賞してきているのです。社会人になる前に色々な表現をインプットして理解しているわけです。
まさしくセンスなどという特別な才能じゃなくて知識ですよね。
ちなみに当サイトでも、見て解るように具体例を付けてデザインの知識を解説しています。参考にしてみてください。
おススメのデザイン書
非デザイナーやデザイン初心者がデザイン入門書を選ぶ上で気を付けた方がいい点を解説したところで、私がおススメしたいデザイン書を紹介します。
知識を解説したデザイン書
デザイン入門教室という書籍があります。これはとても優秀な書籍です。デザインに必要な知識が一通り丁寧に解説されています。まさしく初心者はここからという書籍です。
この書籍を読めば、フォント、レイアウト、色というデザインの三大要素を知識として学ぶことができます。黄金比や白銀比、写真の使い方なども解説されています。デザイン入門教室はデザインに必要な基礎知識が網羅されている書籍なのです。
私もデザイン書を何冊も読んでいますが、一番最初に読む教科書としておススメしたいのがこのデザイン入門教室です。
デザイン入門教室 [特別講義] 確かな力を身に付けられる ~学び、考え、作る授業~ (Design &IDEA) [ 坂本 伸二 ]
教科書としてはノンデザイナーズ・デザインブックという書籍も有名なようです。私はまだ読んでいないのですが、18年にも渡って定番の書籍として読まれているようです。
タイトル通りノンデザイナー、つまり非デザイナー向けに書かれた書籍です。
目次を見たところ、レイアウトと活字に関する解説が豊富なようです。しかし配色やデザインサンプルもあるようです。
第4版とのことで、長く読まれている教科書であろうと感じられます。
ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版] [ RobinWilliams ]
デザインの考え方を解説した書籍
誰に何をどうやって伝えるか?という解説から入るのがなるほどデザインという書籍です。
こちらはケース別に適切な表現とその理由が解説されている書籍です。デザインの考え方が初心者でも解るため、とても売れているデザイン入門書です。
プロのデザイナーはなぜこの表現なのか?を説明できます。これがプロの条件です。ただ何となくカッコいいとか見栄えがいいでは素人なのです。
そういう意味でも、このシチュエーションでは、このターゲット層にこれを伝えるなら、この表現が適切という考え方ができるようになるとデザインが解ってきたと言えるでしょう。
そういうデザインの考え方を学ぶにも、なるほどデザインは良い書籍だと私は考えています。
なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本。 [ 筒井美希 ]
具体例を解説した書籍
続いて見て解る具体例が付いている書籍を紹介します。デザイン力の基本と人を動かすデザイン22の法則という書籍です。
デザイン力の基本も、人を動かすデザイン22の法則も、見て解るようにデザインの例と基本的な知識や考え方が紹介されています。非デザイナーやデザイン初心者向けと感じられる丁寧な解説の書籍です。
デザイン力の基本は、ダメなデザインを洗い出してから方向性を絞るなど、著者自身が長年デザイナーをやって実践で身に付けたのかな?と思えることも解説されています。
解説の解りやすさに加えて、全てのルールに例が付いていて、見て解るようになっている点も好印象です。
人を動かすデザイン22の法則は、一点の法則など知識の解説はもちろん、SNS向けの写真の撮り方もあります。今風な感じがしてきます。
しかしそれだけにとどまらず、自社のデザイン基準を作ることや、デザインのフォーマットを作って再利用することなど、デザインを使う仕事のやり方も解説されています。
こちらも例がついていて、見て解るようになっています。理由とセットで見て解ることは、デザインの知識の活用やデザインの考え方の理解に役立ちます。
これならわかる! 人を動かすデザイン22の法則 [ ウジ トモコ ]
この2冊はどちらもnoteにレビューを書きました。参考にしてみてください。
他にも○×クイズで学ぶデザイン書もあります。クイズで学ぶデザイン・レイアウトの基本という書籍です。
こちらも私は読んだことがあります。2つのデザインについてどちらが良いかを○×で選ぶというクイズ形式で、良い理由と悪い理由が解説されています。
この○×クイズの良いところは、良いデザインは何がコツなのか、悪いデザインはどういうところがイケていないのかを、見て理解できることです。
食べ物に寒色を使うと毒々しいから良くない、迫力を出したいなら裁ち落としを使って大きく見せるなどです。
クイズで学ぶデザイン・レイアウトの基本は、デザイン初心者が何を意識してデザインすればよいかが解る書籍です。
もっとクイズで学ぶデザイン・レイアウトの基本【電子書籍】[ ハラヒロシ ]
その他にはよくあるパターンを紹介したあるあるデザインという書籍もあります。リファレンスとして使える書籍です。
先ほども書きましたが、デザインは相手に伝わることが重要です。それゆえユーザーにとって学習コストが低い表現、すなわち見て理解しやすい表現が必要になります。
そのような理由から、よく使われる表現が出てきます。それをよくあるデザインとしてパターン化したのがあるあるデザインという書籍です。
おススメのデザイン雑誌
情報収集できる雑誌
ホットなテーマだったら日経の雑誌ですね。日経は色々な職種向けに業界でホットなテーマを扱う雑誌を出しています。
デザインに関しても日経デザインがあります。私はあまり読んでいないですが、日経デザインが出した書籍を読んだことはあります。流行った商品の分析がアンケート調査付きであって楽しかったです。
久々に日経デザインのホームページを見て、ちゃんと読もうと思いました。今が解りそうなニュースが沢山あります。
ケーススタディを読める雑誌
私が好きでよく読む雑誌がデザインノートです。
デザインノートはディレクターたちが顧客の要望に沿って試行錯誤しながら成果物を作るというプロセスを紹介している雑誌です。
プロのデザイナーが顧客の課題をどう理解し、どういう解を提示し、どういう考え方で制作に臨むかが解る雑誌です。いわばケーススタディを学べる雑誌です。
日常的に見かけるチェーン店の店舗デザインやブランドも登場すれば、鉄道やゆるキャラ、高級な食品や雑貨、化粧品も登場します。
ケースは様々ですが、世の中の色々な製品やブランドのケーススタディを読むことができます。
またディレクターそれぞれに個性やこだわりがあり、こだわりについてもインタビューを行っているところが好感を持てます。
プロの仕事、こだわりを持った仕事というものを実感できるのがデザインノートの良さでもあります。
対象はディレクターやプレイングマネージャーの方となります。チームを率いて顧客課題に向き合うという内容ですので、そのような仕事をしている方にとっては馴染みやすいでしょう。
デザインのメイキングマガジン – デザインノート ON THE
ケーススタディではブレーンという雑誌もあります。私はたまに読んでいる程度ですが、企業の様々な広告の事例や、取り組み方などを読めます。
デザイナーだけでなく、発注側企業の商品企画やマーケティングの方にもおススメの雑誌です。
実技を解説している雑誌
専門誌と言えば業界でホットなニュースや実践的な技を紹介しているものです。デザイン雑誌にもそのような雑誌はあります。
+DesigningとWeb Designingです。
+Designingはグラフィックデザインの実技を解説している書籍です。PhotoshopやIllustratorなどのテクニックの解説がよく載っています。
Web DesingingはWebデザインの実技を解説している書籍です。
Webデザインの雑誌ですので、デザインの知識だけでなくWebサイトの制作や運用までカバーしています。
またHTML、CSS、JavaScriptなどのコーディングに関する解説が出てくることもあります。ちょっと前(2021年12月)にはPython特集もあったようです。
また昨今関心が高まっているセキュリティについても2022年10月に特集が組まれていたりと、Webサイトの制作・運用に必要な知識を幅広くカバーしている点が特徴です。
デザインを学ぶメリット
デザイン入門書の選び方と私が読んだことがある、あるいは知っているおススメの書籍を解説したところで、デザインを学ぶことで得られるメリットを解説します。
マーケティングに役立つ
デザインの知識はマーケティングに役立ちます。理由は簡単で、商品パッケージや宣伝・広告はマーケティングにおいて重要であり、それらを制作するのにデザインが使われるからです。
マーケティングの範囲は製品・サービスの企画からアフターサポートまで幅広いので一言では言い表せません。
しかしマーケティングにおいて重要である、ターゲット層に製品・サービスや企業・ブランドの魅力を伝えることはデザインを応用すればできます。デザインは相手に伝えたいことを視覚的に伝える手段だからです。
それからマーケティングにおいては需要を喚起することも必要なときがあります。マクドナルドなど誰もが知っているチェーン店がCMを流すと、たまには行ってみようとか、限定品を食べに行こうと思う人も出てきます。
このように表現によって顧客の心理に訴えて行動を促すこともできます。
デザインは伝えることや心を動かすことにおいてとても役立つのです。
ブランディングに役立つ
デザインはブランディングに使われます。デザイナーの中にはブランディングで活躍する人もいるくらいです。またブランディングデザインというブランドをデザインする仕事も存在します。
日本のデザイナーで最も有名な一人であろう佐藤可士和氏も、ブランディングの仕事に携わっています。佐藤可士和氏の代表的な仕事を挙げると、楽天、ファーストリテイリング、セブン&アイなどです。
最初にセンスは知識を活用して最適解を出す能力という話をしました。その話をしていて、くまモンや相鉄、中川政七商店のデザインを手掛ける水野学氏も、デザイナーでありながらブランド戦略コンサルタントをやっています。
ちなみに水野学氏がセンスは才能ではなく知識を活用して最適化する能力だという話をしている書籍があります。慶応大学で行われた人気講義を書籍化した、水野学のブランディングデザイン講義という書籍です。
「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義【電子書籍】[ 水野学 ]
デザイナーで経営とブランディングに力を入れている、エイトブランディングデザインという会社があります。代表の西澤明洋氏は日経デザインの書籍でブランディングを解説したこともありますし、デザインノートにも何度か登場しています。
このようにブランディングに進出するデザイナーはいます。ブランドの魅力を作って伝えるためにはデザインが有効だからです。
例えば高級ブランドを想像してみてください。独特の個性やカッコよさ、美しさがあると感じるでしょう。凄腕の職人が作っているからというのもありますが、ブランドの世界観や芸術的・独創的なデザインの検討にも凄い時間と労力をかけているはずです。
モノがあふれて作るだけでは売れない時代ですので、経営においてブランド力は重要な要素となっています。ブランドを設計・構築・運用する上でデザインは有効なのです。こういう観点でもデザインを学ぶメリットがあります。
ブランディングについては別途カテゴリーを作って記事を書いていますので、参考にしてみてください。
コミュニケーションに役立つ
先ほどデザインは伝えたい相手に伝える方法だという話をしました。つまりコミュニケーションの方法です。
デザインを学ぶことで、この相手にはどういう表現だと伝わるのか?や、こういう伝え方をするとどう感じるか?を考えられるようになります。まさしくコミュニケーションそのものです。
またデザインを学ぶことで、整列させたり図や表で表したりする方法も学べます。すると相手に解りやすく伝えることができるようになります。こういう観点でもコミュニケーションが上手くなると言えます。
デザインを学んだらコミュニケーションにも役立ててみてください。きっと役立つ知識です。
ときには家族や友達にお洒落なプレゼントをするのにも役立ちます。デザインを学べば、デザイン性に優れた商品を選ぶ目も肥えますから。
デザイン思考に役立つ
以前、私が所属している会社でデザイン思考のワークショップがありました。私が所属している会社はITコンサル会社ですので、社員は上流工程が得意なITエンジニアが中心になります。
そこでデザイン思考の方法論が解説されたところで、なぜこの方法をデザイン思考と呼ぶのかが解らないという意見が出ました。エンジニアなどデザイナー以外から見ると、デザインはビジュアル面を整える方法なわけですね。
ここまでこの記事を読んでくださった方は、デザインとはビジュアル面を整えることではないと既に理解できていると思いますが、世間一般はそうではないのです。
デザイン思考の内容を見ると、デザイナーが仕事で使っている考え方や方法が中心なのです。デザインの考え方が解る書籍や、デザインノートのようなデザイナーの考え方や仕事のやり方が解る雑誌を読んでいると出てくる内容なのです。
よってデザイン思考を学び実践するにも、デザインを勉強しておくと役立つはずです。
ブランディングに役立つという話のところでも、モノがあふれて作るだけでは売れない時代だと書きました。
ブランド価値やイノベーションが大事な時代だからこそ、デザインを勉強してブランディングやイノベーションに役立てるといいのです。
終わりに
今回の記事はアマチュアクリエイターである私がデザイン書を何冊も読んで、自分でも作品を作ってみて感じたことを基に書きました。
デザイン書を読み、プロのデザイナーの思考とプロセスを読んで創作をしているからこそ感じていることを書きました。
デザインやクリエイティブはセンスという生まれ持った特別な才能が必要と思われていますが、違います。勉強すれば身に付きます。
書籍や雑誌でプロのデザイナーの仕事を知れば、才能ではなく大量のインプットや地道な試行錯誤の繰り返しが重要なことが解ります。
だからみなさんも自分にはセンスがないと思わずにデザインを学んでほしいです。
そしてデザインを学ぶことで、仕事での資料作成や画面作成などだけでなく、クリエイティブな考え方やコミュニケーションも上手くなってほしいです。
きっとデザインを学んだメリットを感じられるでしょう。