投資対効果を計算しよう|回収期間法・割引回収期間法による計算

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投資対効果の計算

前回はDCF法による投資対効果の計算について解説しました。

今回は他の方法の1つである回収期間法について解説します。回収期間法には割引ありバージョンもあるので、併せて解説します。

今回も前回同様に割引キャッシュフローなどの概念を使います。これらについて確認したい場合は、前回の講義を参照してください。念のため式を書いておきます。

CF = (CIF – COF) * (1 – t) + Dt

  • CF: キャッシュフロー
  • CIF: 収入(売上高)
  • COF: 支出(売上原価+販管費+支払利息)
  • t: 法人税率
  • D: 減価償却費

ちなみにCIF – COFは営業利益-支払利息でもあります。

回収期間法

回収期間法は、投資を回収できる期間を算出する方法です。例えば2年で元を取れるなどです。簡単かつ解りやすい方法です。英語ではPayback Period Methodと呼びます。

回収期間法
回収期間法は投資の元が取れる期間を計算することで、投資の是非を判断する方法です。

回収期間法の計算例

キャッシュフローが一定かどうかの2パターンあります。キャッシュフローとはお金の出入りと考えてください。

キャッシュフローが一定の場合

A社は1,000万円で機械を購入しました。この機械を使えば、キャッシュフローが毎年4,00万円増えます。このときの回収期間は次のようになります。購入金額は自己資金を使うため、利息は無視します。

回収期間=1,000÷400=2.5(年)

キャッシュフローが毎年一定の場合、単純に割ればよいです。

キャッシュフローが一定でない場合

次にキャッシュフローが一定でない場合を見てみましょう。

B社は2,000万円で店舗向け物件を改装し、新店舗をオープンしました。この店舗ではキャッシュフローが次のようになる見込みです。投資資金は全額自己資金とします。

科目1年後2年後3年後
キャッシュフロー5008001,100
B社の新店舗のキャッシュフロー予測

この場合は単純な割り算では正しいと言えません。1年後の分から順に回収していきます。

科目1年後2年後3年後
キャッシュフロー5008001,100
残り回収額1,5007000
B社の新店舗のキャッシュフロー回収予測

3年後には回収できる見込みですね。というわけで回収期間は2年+数か月になります。数か月の部分が解れば回収期間が解りますね。それでは計算してみましょう。

回収期間 = 2 + 700 / 1,100 = 2.636(年)

割り切れないので小数第4位を四捨五入しています。つまりこのような式で表せます。

回収期間=(回収完了年-1)+回収完了年の残り回収額÷回収完了年のキャッシュフロー

回収期間法の注意点

回収期間法は割引を行いません。つまりお金の時間的価値を考慮していません。お金の時間的価値とは、今の1万円を投資すれば来年には1万200円になるなら、来年の1万円は今年の9804円に相当するというものです。

お金は投資をすれば増やせるので、額面が同じでも期間が経つと価値が低くなるのです。これがお金の時間的価値です。前回の講義でも解説していますので、参照してみてください。

割引回収期間法

回収期間法は手軽に使えます。しかし時間的価値を考慮していません。そこで次は、時間的価値を考慮した回収期間法を解説します。割引回収期間法と呼びます。

割引回収期間法の計算例

A社は16,000かけて設備投資を行いました。キャッシュフローが下記のようになっており、資本コストが5%だとしましょう。現価係数と現在価値も併せて記載します。ただし現価係数は小数第4位を、現在価値は小数第1位を四捨五入しています。

1年後2年後3年後4年後5年後
キャッシュフロー3,0003,5004,0004,5005,000
現価係数0.9520.9070.8640.8230.784
現在価値2,8573,1753,4553,7023,918
割引回収期間法の計算例

割引回収期間法ではキャッシュフローを現在価値に割り引いた金額を使います。こうすることでお金の時間的価値を計算に入れることができます。下記の表ではキャッシュフローはCFと略しています。

それでは1年ずつ回収していきましょう。

1年後2年後3年後4年後5年後
CF現在価値2,8573,1753,4553,7023,918
残り回収額13,1439,9686,5132,8110
割引回収期間法で設備投資額の回収を計算する例

計算式は回収期間法と同様です。

割引回収期間=(回収完了年-1)+回収完了年の残り回収額÷回収完了年のCF現在価値

この例ですと5年後に回収が完了します。よって割引回収期間は下記のようになります。

割引回収期間 = 4 + 2811 / 3918 = 4.717(年)

ただし割り切れないので小数第4位を四捨五入しています。

練習問題

回収期間法の練習問題を用意しました。解答と解説、Excelでの計算例も用意しています。

更なる練習問題が欲しいという方のために、追加の練習問題も用意しています。ガシガシ計算して練習してください。

会計スキルを高めるためには、数学のように何度も手を動かして計算することが大事です。是非練習問題もやってみて、理解を深めてくださいね。

終わりに

今回は回収期間法割引回収期間法について解説しました。前回のDCF法と合わせて活用すれば、大体は事足りるかと思います。どちらも計算が大変なので、Excelを活用するとよいです。

投資対効果の計算は会計の知識がなければ困難です。身に着ければ確実に他人との差別化になります。頑張ってみてください。

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